新たなサイバーリスクに備えよ!損保各社がプラン多様化に動く

 大手損害保険各社がサイバーリスク保険に力を入れている。官公庁や民間企業を狙ったサイバー攻撃が増加傾向にある中、官民で対策が進んでいる。ただ、完全防止が難しいとされるため、損害賠償など万が一への備えとして保険への需要は高い。一定の対策を実施ずみの企業には保険料の割引制度を導入するなど、損保側は多様なプランを用意し、需要喚起を図る。

 「前年比で40%以上の増加で推移している」。損保ジャパン日本興亜は、情報漏えいに伴う賠償責任保険が収入保険料ベースで好調に推移している。企業側のサイバーリスク対策が強まり、賠償責任対策として保険に対する引き合いが増えたことが背景にある。

 実際、警察庁によると、2014年の企業などに対する不正アクセスの認知件数は3545件と前年比で約20%増加。15年も多くの個人情報を有する企業や団体における被害が目立っている。

対策で割り引き


 ただ、どんなに対策に策を講じても、サイバー攻撃を完全に防止することは難しいとされている。そこで万が一への備えとして、損保会社が提供するのが「サイバーリスク保険」だ。従来から販売していた賠償責任保険に加え、休業中の逸失利益の補償などを含めた包括的な保険として開発され、足元では競争が激化している。

 大手損保で最も先行するのは東京海上日動火災保険。15年2月から発売し、現在までに1300件を超える引き合いを得ている。同社の場合、不正アクセスの恐れが生じた時点から補償するため、大手損保の中でサイバー被害に関する補償の範囲が最も広い。

 16年1月からは経済産業省が策定した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に沿った対策を施している企業を対象に、保険料を最大55%割り引く制度も導入。大手企業だけでなく、中堅・中小企業へも幅広く導入しやすく設計した。

 損保ジャパン日本興亜も賠償責任保険に加え、15年10月にサイバーリスク保険を発売し、東京海上を追う。日本品質保証機構などと提携し、同講などが認証する情報セキュリティマネジメントシステムを取得した企業には保険料を最大60%割り引く制度も導入した。

マイナンバー運用開始


 三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険もサイバーリスク保険を共同開発した。この内、三井住友海上は既存の賠償責任保険などと合わせると、直近の半年間で約30%販売が増えているという。

 個人情報を巡っては16年1月からマイナンバーの運用も始まり、情報を取り扱うリスクはますます増加している。特に、中堅・中小企業では大手企業に比べ、管理ノウハウの対策が不十分な企業も多い。サイバー攻撃に関する企業の防衛ニーズが高まる中で、損保会社の保険獲得を争う競争もますます激しくなっていきそうだ。
(文=杉浦武士)

日刊工業新聞2016年2月26日付金融面

神崎 明子

神崎 明子
02月28日
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企業にとってサイバー攻撃への対処は喫緊の課題だけに、まさにニーズを捉えた商品ラインナップなのでしょう。

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