ファンとの約束を果たしたい―災害ゲーム「絶体絶命都市」をもう一度この手で!

地方創生を支える!注目のベンチャー企業 #5 グランゼーラ


「これだけ叩かれるなら他社は参入しない」


 会社設立から4年目には、ついに「絶体絶命都市」の版権を前の会社から譲渡してもらうことができた。地震災害をゲーム上で再現し、災害で壊れた街を主人公が生き延びていくこのゲームについて、「災害の啓発という狙いがあるんですか?」と聞かれることも多いという。しかし名倉氏はあくまでエンターテインメントとして考えている。地震災害を扱った作品は映画やコミックにはある。でもゲームにない。「映画やコミックで災害をテーマにしても不謹慎だと言われないが、ゲームだと言われる。実際クレームのメールも来る」という。

 当時はそのことを不満に思っていたが、今はそれでいいと思っている。「これだけ叩かれるなら、他の会社は災害ゲームに参入しないだろう。特に大手メーカーほど参入しづらい。グランゼーラは、創業目的の一つが、この災害ゲームを世に出すことだし、何よりもその覚悟で作った会社。災害ゲームを今後提供していく上でこれ以上の強みはない」。

 名倉氏は若い頃、ゲーム制作の仕事に行き詰まり、会社勤めをしなかった時期がある。フリーランスで1年ほどゲームの企画の仕事をしていた。しかし、企画書を作り、プレゼンをするところまででは、ゲーム制作者として満たされないものがある。

 そこでたどり着いた結論が「サラリーマンこそ好きなゲームを作ることができる」だった。30歳で再びサラリーマンとしてゲーム制作をし始めてからは、寝る間を惜しんでゲームを作った。会社でも比較的厚遇され、自身もサラリーマン向きだと感じていた。

 ただ起業する2年ほど前からは、自分がやっていることと組織に望まれていることの乖離が大きくなっていると感じていた。ファンは増え、手ごたえを感じていたが、利益に結び付かない過剰なサービスを行っていたところもあり、会社に迷惑をかけているという思いもどんどん強くなっていた。「会社の環境や資源は手厚い、ファンを喜ばすことはもっとやりたい。だが会社のお金を使う以上やれることにも限界がある。そこまで徹底して面白さを追求するなら、自分でリスクをとらないといけないな」と思った。

年齢を重ねるごとに柔軟に


 現在はソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション(PS)」向けのゲームを主軸に事業展開しつつ、今年中にはスマートフォン向けのゲームも発売する予定でいる。自分たちがゲーム機向けに行ってきたゲーム制作の技術も活かせるに違いない」とスマホ用ゲームに意欲を持つ一方で、参入障壁が低すぎるという課題もある。

 スマホゲームは作ろうと思えば誰でも作って世に出せる時代。参入するには何か武器が必要。「今のゲームは、技術的なことでは差が出にくい。企画面で違いを強く打ち出していかなければ」と確信している。実際、地震災害ゲームは今まで誰も作らなかったジャンルでそれを証明してみせた。

 これから目標とする「娯楽で革命を起こす」には何が必要か。それには会社として既成概念にとらわれない風土を作ること。しかし、今のグランゼーラではそれがまだできていないことに焦りも感じている。「そういう風土になるには失敗した経験のある社員がもっと増えないといけない。もっと失敗をさせてやらないといけない。今は、私ばかりが失敗していますから」。

 名倉氏は年齢が上がることで発想が固くなるという意見には否定的だ。「映画監督を見ると、年齢が高い方が新しいものを出しておられる。ゲームやコンピューターが絡むと、若くないとダメみたいな話になるが、若い人とベテランがゲーム制作の現場で話しているのを聞いていても、若い人の方が既成概念に捉われていると感じることはよくある」。

 実際名倉氏は年齢を重ねるごとに肩の力が抜け、柔軟さが出てきたという。それでも「自分自身がもっとレベルアップして柔軟さを保たないといけない。社内から飛び抜けた提案があっても握りつぶしてしまうかもしれないので」。

 いずれは上場も考えている。一つは採用面。「家族や友達からゲーム会社なんか不安定だし、得体が知れないからやめておけ」と言われてしまうケースもある。

 もう一つはゲームの提供側とプレイする側との関係性構築のため。会社を設立した当時、ファンから出資させて欲しいという話があった。そういう関係の作り方もあるのだと思ったという。「グランゼーラのゲームのためにお金を出してくださる株主向けに専用のゲームを毎年配当として提供する。そのゲームを遊びたいと思うファンにグランゼーラのオーナーになっていただく」。そんな上場が目標だ。

 グランゼーラの成長は名倉氏の食欲にかかっている。

<会社概要>
株式会社グランゼーラ
本社所在地 石川県金沢市駅西新町3丁目1番10号 NEWSビル6階
設立 2011年4月
事業内容 家庭用ゲームソフトの企画、制作、販売。


いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)のサイト
http://www.smrj.go.jp/incubation/i-bird/054275.html


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