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ドコモ、収益回復は本物か。端末値引き是正も追い風

来期以降もコンテンツ事業などがけん引材料に
ドコモ、収益回復は本物か。端末値引き是正も追い風

加藤社長(昨年9月のアイフォーン6s発売)

 NTTドコモは業績のV字回復に向けた、足取りを一段と強めている。2016年3月期業績見通しは、通信事業の回復やコンテンツなどスマートライフ事業の利益拡大から営業利益予想の上振れは必至。来期は安倍晋三首相の肝いりで総務省が進める「携帯料金引き下げ」の”指導“を受け新設した料金プランの減収影響が課題。これに対して、端末の過度な値引き販売の撤廃で浮いた割引費用とコスト削減で相殺して、好業績を維持する方針だ。

 「手応えはある」。ドコモの加藤薫社長は16年3月期業績予想の達成に自信をのぞかせた。営業利益目標の7100億円に対して、15年4―12月期時点で6855億円を計上。最終コーナーの16年1―3月期は商戦期に入り、販売経費が増えるといった不透明な要素があるとはいえ、通期計画の達成確度はかなり高い。

 好業績を支えるのは土台の通信サービス収入。15年4―12月期でこれまで減益要因だった端末割引費用「月々サポート(月サポ)」を含め、増益を確保した。財務担当の佐藤啓孝取締役は「これは(業績回復への)ターニングポイント」と分析する。

 さらにといったコンテンツ群などを商材とするスマートライフ事業も貢献する。通期営業利益予想の700億円に対し、15年4―12月期の進捗(しんちょく)率は98%とほぼ達成。コンテンツや金融決済収入などのスマートライフ全体が底上げされており「通期で800億円超を期待している」(加藤社長)と鼻息は荒い。

 来期の17年3月期は携帯料金の引き下げを反映したライトユーザー向けプランや、販売方法の見直しによる影響が焦点。具体的には家族でデータ量を分け合うシェアパックに5ギガバイト(ギガは10億)を新設。月額1700円(消費税抜き)の音声定額との組み合わせで1人当たりの通信料金を安くした。

 さらに実質0円以下など、端末の値引き販売是正から月サポのコスト負担を削減。今春以降、値下げプラン追加が見込まれているが佐藤取締役は「月サポの増益でまかなえるような範囲で提供する」と指摘。業績への影響は限定的になりそう。

 こうしたマイナス影響を払拭(ふっしょく)し、主力の通信事業の安定成長に加え、コスト削減の徹底で増益基調を継続。18年3月期に営業利益8200億円以上という中期目標の前倒し達成も視野に入る。
(文=清水耕一郎)
日刊工業新聞2016年2月9日情報・通信面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 昨年の携帯料金の引き下げ議論の末、低利用者向けの料金プランと「実質0円以下」の撤廃が導入されることになった。通信料金は下がるが、端末代は上がる。もともとの利用料金の値下げではなくメニューを追加し、端末でバランスをとった印象。ユーザーの家計費負担を減らすという当初の目的にかなっているか疑問の声も多い。  一方、携帯電話会社の業績への影響は限定的との見方。ただ2月1日から0円以下の販売をやめたことで競争環境が緩和した。最大手のドコモにとっては有利な状況。追う側のKDDI、ソフトバンクは販促手段が使えず今後の販売に影響が出る可能性がある。携帯キャリアに目が向きがちだが、格安スマホを使えば確実に料金が下がる。認知度の低いMVNOだが、その普及が料金引き下げの本命のような気がする。後ろ向きな議論にならず、ユーザーはわかりやすく安さを実感できるのだから (日刊工業新聞社第一産業部・清水耕一郎)

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