「今年はロボット部門にとって過去最高に忙しい年になる」(ファナック社長)

稲葉社長インタビュー。今期3度目の業績修正も受注は高水準

 ファナックの経営環境が激変している。中国経済の減速により、工作機械用コンピューター数値制御(CNC)装置を中心とするFA(工場自動化)部門が低調。想定以上の受注減を受け、2016年3月期の業績予想を再度下方修正した。また、小型工作機械が主力のロボマシン部門では、スマートフォン関連の特需に復活の兆しがみられない。孤軍奮闘しているロボット部門を、どれだけ伸ばせるかが課題といえそうだ。稲葉善治社長に状況を聞いた。

 ―現状をどう分析していますか。
 「まずFA事業だが当面は減速基調が続くだろう。特に中国は我慢の時期だ。いつ上向くかなど、はっきりした見通しはまだ立っていない。中国の春節(旧正月)が終わるころには、もう少し先行きが分かるようになるはずだ。また、国内はほぼ横ばいで、欧米は堅調に伸びている」

 ―壬生工場(栃木県壬生町)の新設計画に影響はありますか。
 「5―10年といった長期的な視点で決めた投資だ。足元の受注環境を受けて計画を変えることはない。長い目で見れば、アジアでCNC装置などの需要は確実に伸びる」

 ―他の事業はどうでしょう。
 「ロボマシン事業は、しばらくIT関連の特需が見込めない状況。特需以外の需要は底堅いので地道に開拓していく。一方、ロボット事業は絶好調が続いている。日本、欧米、中国といった主要市場での自動化需要は依然として旺盛だ。今年はロボット部門にとって過去最高に忙しい年になる」

 ―ロボット事業に中国経済減速の影響はありませんか。
 「自動車産業を中心に生産設備の余剰が指摘されているが、当社のロボットについては高水準の受注が続いている。日本や欧米に比べれば自動化率はまだ低い。省人化や最新鋭のロボットによる生産高度化を目的とした投資は、今も活発だ」

 ―ここ数年は欧州市場にも力を入れています。
 「他の地域と比べシェアはまだ低い。伸ばす余地はたくさんある。市場が大きく膨らむことはないが、シェアを高めることで収益を拡大できるはずだ」

 ―今後の開発方針はどうですか。
 「技術の移り変わりは激しく、予測が難しい。ただ当社としては、ネットワーク化の技術を引き続き重視する。(出資した)プリファード・ネットワークス(PFN)の技術などを、どう取り込むかが重要になる」

【記者の目・サービス網でシェア拡大】
 業績予想修正は今期3度目。15年10月にスマホ特需の一部再来を受けわずかに上方修正したが、中国のCNC市場の冷え込みは当時の予測を上回った。スマホ関連も足元では再び落ち着いており、今後は「完全に白紙」と稲葉社長は説明する。一方、ロボット事業の視界は良好だ。一部の競合が苦戦する中国の自動車産業向けでも、販売は好調。他を圧倒するサービス網などを武器に、どれだけシェアを拡大できるかが見どころとなる。
(聞き手=藤崎竜介)

米ロックウェルと協業、「つながる工場」後押し


 ファナックはFA機器大手の米ロックウェル・オートメーションと協業し、工場のスマート化支援を加速させる。自社のロボットやコンピューター数値制御(CNC)装置などをロックウェル・オートメーションのITシステム製品で統合的に管理する体制を整備する。北米の製造業を主な対象に、モノのインターネット(IoT)技術を用いた“つながる工場”の実現を後押しする。

 ロックウェル・オートメーションが手がける製造実行システム(MES)などで複数のファナック製品を一体的に監視・制御できるようにした。ロボットなどの稼働データを、工場内のネットワークを通じMESに集約する仕組み。ロックウェル・オートメーション製の表示器上でグラフなどを用い稼働状況を“見える化”するシステムも提供する。

 ファナック内の板金工場にロックウェル・オートメーションのITシステムを導入済み。これにより、現場を最小限の人数で運営するなど、徹底的な効率化を可能にしている。

 協業により自社で手がけていないITシステムの利用を促し、ロボットの省人化効果などを高めることが狙いだ。さらに、現場の機器がインターネット経由で工場外とつながる仕組みも構築可能にし、IoTによる製造革新を支援する。

 ファナックはIoTでは米シスコシステムズ、人工知能(AI)ではプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区)と協業するなど、先端技術をめぐり外部との連携を強化している。国内ではMESなどを販売する日系企業とも積極的に協業する方針。

 ロックウェル・オートメーションはMESのほか制御機器など工場自動化(FA)製品を手がける。

日刊工業新聞2016年1月29日/2月8日
日刊工業新聞

明 豊

明 豊
02月09日
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インダストリアルインターネットでファナックは「日本のGE」になれるポジションにいる。これまで自社で閉じてきた開発リソースを、ロックウェルなど海外の大手や日本の気鋭ベンチャーのPFNと協業するなどオープンに舵を切ったことは、業績の変化以上に注目すべきこと。

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