中小企業の「事業承継税制」利用急増のなぜ

雇用維持の水準、株式贈与後も先代経営者が役員として残れる利点

 中小企業の経営者を対象に相続税や贈与税を猶予する「事業承継税制」の利用が急増していることが分かった。2015年1月から適用要件が緩和されたためで、中小企業庁の推計によると、これまで平均して年間170件程度にとどまっていた利用件数が15年は350件を超える見通しだ。中でも雇用維持の水準や株式贈与後も先代経営者が役員として残れるようになった点が奏功している。

 15年の利用件数が推計なのは、相続税は相続開始から5カ月後以降に申請が行われるため、実際の納税猶予までの時差があるため。

 事業承継税制は、中小企業の後継者が先代経営者から非上場株式を相続・贈与された場合、その80%分(贈与は100%)の納税を猶予する仕組み。09年に始まった。ただ納税猶予を受けるための要件が厳しく、利用は伸び悩んでいた。

 そこで、13年度税制改正で大幅な改善を図り、15年1月から新制度に移行した。要件のひとつ、「雇用の8割以上を維持」については「相続から5年間毎年」ではなく「5年間の平均」で評価するよう改めた。こうした見直しが中小企業の計画的な承継をようやく後押ししつつある。

 新制度では、親族以外の後継者も認め、先代経営者は役員として残れるようになった。この結果、従業員への株式贈与による事業承継は現時点で4件みられるという。

 中小企業庁は事業承継税制拡充に続き、非上場株式の評価方法見直しについても意欲を示す。上場企業の株価上昇に伴い、非上場の中小企業の株式も想定以上に高く評価され、円滑な事業承継の妨げとなっているためだ。

日刊工業新聞2016年2月4日1面
日刊工業新聞電子版

矢島 里佳

矢島 里佳
02月07日
この記事のファシリテーター

中小企業の後継者問題。今までも何度も話題に出てきていますね。
今回の、事業承継税制要件緩和を受けて、その利用が増えているというのは少し明るい兆しが見えてきましたね。今回の緩和により、親族以外の後継者も認められるようになったというのは、大きな一歩だと感じます。伝統産業の世界も、ファミリービジネスが多いのですが、近年は息子さん、娘さんが継がないというケースも多く、その時点で日本の伝統の継承が途切れてしまうということが、全国各地で起きています。実の息子や娘でなくとも、やる気のある若者に日本の伝統の将来を託せるようになる新規継承は、業界に新たな考え方を取り入れるきっかけにもなりそうですね

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