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太陽誘電、スマホ鈍化も積層セラミックコンデンサー増産投資で大勝負

大容量化で村田製作所に対抗。車載・産機向けも狙う
太陽誘電、スマホ鈍化も積層セラミックコンデンサー増産投資で大勝負

3月に2棟目が稼働する新潟太陽誘電

 太陽誘電が積層セラミックコンデンサー(MLCC)事業への成長投資を活発化させている。MLCCの生産子会社、新潟太陽誘電(新潟県上越市)の新棟が完成し、3月に稼働する。投資額は約100億円。モノのインターネット(IoT)技術を導入した工場で、品質と生産性を一層向上させる。主力のスマートフォン向けに加え、車載や産業機器向けの製品開発を強化し、MLCC市場での優位性を維持する。

8年ぶり新棟


 新潟太陽誘電は群馬県やマレーシアなどにある五つのMLCC工場の中で、高機能MLCCを手がける基幹工場。約8年ぶりとなる新棟設置で、2日に竣工(しゅんこう)式を迎える。建築面積は約1万5000平方メートル。延べ床面積は2万6000平方メートル。部品全数の生産状況をリアルタイムで管理できるシステムを導入しており、品質改善や新規設備の開発などに生かせるようにした。2018年度まで毎年10%ずつ増産する計画だ。

 太陽誘電のMLCC事業は全社売り上げの約半分を占める主力事業の一つ。スマホに使われるMLCCは村田製作所、韓国サムスン電子傘下のセムコとシェアを分け合っていたが、小型・大容量といった特性を持つ高機能MLCCについては材料開発に強い日系2社が業界をリードしている状況だ。

需要底堅く


 スマホは販売台数成長が鈍化し始めており、世界シェアの高い日系部品メーカーへの影響を不安視する声もある。ただ、太陽誘電の佐瀬克也上席執行役員は「MLCCの需要は底堅い」と指摘する。高速無線通信「LTE」端末の普及や、スマホの中央演算処理装置(CPU)の性能向上で端末1台当たりに搭載されるMLCCの数と電気をためる能力を示す静電容量の総量が増加するからだ。

 実際、昨年発売されたある高級端末では、前年モデル比でMLCCの搭載数が10%、静電容量は同40%向上したという。今後、中国スマホメーカーなどが手がける中級機種にも同様の動きが広がる見通しで「供給責任を果たすためにも増産投資が必要だった」(山田英夫新潟太陽誘電社長)と話す。

大容量化進む


 スマホ向けの次に同社がMLCCの採用拡大を期待するのが、車載や産機向け。100マイクロファラッド(マイクロは100万分の1)を超えるMLCCの大容量化に成功し、これまで主流だったアルミ電解コンデンサーからの置き換え需要を取り込めると見るからだ。MLCCは電解コンデンサーに比べ小型で、自動車やサーバーなどの設計自由度向上や軽量化できるメリットがある。

 同社は昨年「4532」サイズ(縦4・5ミリ×横3・2ミリメートル)で、静電容量が470マイクロファラッドのMLCCの量産を開始。すでに同サイズで1000マイクロファラッド品の試作開発に成功し、16年度内の商品化を目指す。競合の村田製作所もMLCCの大容量化を進めており、スマホに加え、車載や産機分野でも両社の競争は熱を帯びそうだ。
(文=下氏香菜子)
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
MLCCで勝ち残るためには、小型、大容量化の開発競争に加えて、必要な数量を高い歩留まりと品質でタイミング良く供給できるかがカギ。この2点で業界トップの村田製作所にどう迫り、そして韓国メーカーをどこまで突き放すことができるのか?

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