CO2排出枠クレジットを“爆買い”している企業はどこだ?

大手が中小や自治体の保有分に殺倒。マネーゲームは防げるか

昨年12月は制度創設以来、最高に


 二酸化炭素(CO2)排出削減量を取引できる国の「J―クレジット制度」による2015年12月のクレジット販売・移転量が、前月比20倍の63万トンに急拡大したことが分かった。13年の制度創設以来、過去最高を記録。国連の京都メカニズムクレジットを活用できなくなり、J―クレジットの購入に大手企業が殺到した。温暖化対策の新しい国際枠組み「パリ協定」採択の影響が早くも現れた。

 J―クレジットは、中小企業の省エネルギー対策や森林保全などで削減できたCO2量を取引できる「クレジット」にする制度。CO2削減に取り組んだ中小企業はクレジットを売却し、設備投資額の一部を賄える。大手企業などクレジット購入者は自社の排出削減分に換算できたり、商品の生産などで発生したCO2量を打ち消すカーボン・オフセットに利用できる。

 15年12月はクレジットの半分を保有する低炭素投資促進機構だけで57万トンを販売した。これは直近の最高である8月と比べても11倍となる過去にない水準。中小企業や自治体が保有するクレジットの12月の移転量も15年度で最高となる6万7000トンを記録した。移転量には売却以外に自社でカーボン・オフセットに利用した分も含まれる。

 京都クレジットの活用期間の終了が、J―クレジットの需要を喚起した。日本が京都議定書の第二約束期間(13年―20年)に参加しなかったため、企業は購入した京都クレジットを排出削減量に組み込めなくなった。

大口顧客は電力事業者か?


 12月にクレジットを”爆買い“した企業は明らかではないが、新電力を含めた電力事業者が考えられる。電力事業者は電力供給に伴うCO2排出を減らす手段として京都クレジットを大量購入していたからだ。パリ協定に基づく国のCO2削減目標の達成に向け、電力事業者は30年度までに排出量を35%減らす目標を掲げており、J―クレジットの大口顧客となりそうだ。

 電力事業者以外の企業もパリ協定による削減対策の強化に備え、クレジットを大量購入した可能性もある。購入希望者が多いほど、クレジットを売る側の中小企業の省エネ投資が促される。

 環境省や経済産業省の担当者は「勢いが続くかどうか、1月の販売を見てみないと判断できない」と慎重だが、J―クレジットが活性化する環境が整ってきた。

日刊工業新聞2016年2月2日環境面
日刊工業新聞電子版

松木 喬

松木 喬
02月03日
この記事のファシリテーター

初めてクレジット取引の推移を調べてみました。実際にクレジットを使った企業が判明するには時間がかかります。16年夏の温対法提出まで待たないと、12月に大量購入が起きた理由がはっきりしませんが、京都メカニズム終了がきっかけということで間違いないと思います。14年度のデータによると電力事業者が購入するクレジットのCO2量は平均2万7500トンで、これだけの大口顧客は他にいません。ただ、他の大企業も、自社の削減目標の未達に備えて購入した可能性もあります。クレジット価格がつり上がるを見越し、安い今のうちに購入しておくようなマネーゲームにはならず、健全な形で取引が続けばいいと思います。

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