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「『MINI』のような存在感のあるグローバルブランドを目指す」(ダイハツ社長)

トヨタ、ダイハツ完全子会社で両社長会見。「(トヨタは)小型車で存在感を示していない」(豊田章男社長)
「『MINI』のような存在感のあるグローバルブランドを目指す」(ダイハツ社長)

豊田章男 トヨタ自動車社長(左)と、三井正則 ダイハツ工業社長(右)

 トヨタ自動車は29日、ダイハツ工業を8月1日付で完全子会社化すると発表した。現在51・2%の出資比率を両社の株式交換により、100%に引き上げる。軽自動車を中心に小型車を展開するダイハツと、初期構想の段階から小型車事業の戦略を共有し、両ブランドの車種開発やコスト競争力の強化、新興国市場の開拓などにつなげる。

 東京都内で会見したトヨタの豊田章男社長は「北米市場向けなどのミドル(中型車)クラス以上を中心としたクルマ作りや、先端技術開発は比較的得意だが小型車ではそこまでの存在感を示していない」と現状を表現。小型車をてこ入れする必要性を強調した。ダイハツの三井正則社長は「独BMWに対する『MINI』のような、世界に通用する存在感のあるグローバルブランドを目指していく」と意気込みを語った。

 協業の概要としては、トヨタとダイハツ両ブランドの差別化によるラインアップの拡充、ダイハツ独自のクルマづくりのノウハウのトヨタグループでの共有、国内や新興国での事業基盤の相互活用などを挙げた。株式交換ではダイハツ株1に対し、トヨタ株0・26を割り当て、ダイハツは7月27日付で上場廃止となる。

“大トヨタ”、小回りな企業経営が課題に


 トヨタ首脳は「業績がいい今こそ将来に向けた布石を打たないといけない」という。新興国市場が低迷する今、中長期目線で持続的成長が可能な小型車戦略のシフトチェンジに踏み切ろうしている。

 トヨタの新興国戦略ではピックアップトラックなどの戦略車「IMV」シリーズが年販100万台規模に成長し成功している。ところが新興国でエントリーカーとして需要の大きい小型車事業は、長く課題となっていた。

 特に軽自動車が属する「Aセグメント」と呼ばれる小型車は商品展開が遅れていた。そこで以前から小型車に特化する子会社のダイハツと「連携を深めながら対応していきたい」(トヨタ幹部)としていた。

 第1弾として2013年にトヨタは、ダイハツがインドネシアで生産した排気量1000ccの小型車「アイラ」のOEM(相手先ブランド生産)供給を受けた。インドネシアとフィリピンで販売している。またタイ向けの新たな小型車の開発もダイハツに委託した。

 トヨタは企業規模が巨大化しても市場変化などに臨機応変に対応して成長する“機動力”を大きな課題としている。このため、12年にはトヨタ車体と旧関東自動車工業(現トヨタ自動車東日本)を完全子会社化した。

 トヨタ車体は商用車など、トヨタ東日本は小型車といったように車両種類別に各専門集団が開発から生産まで一貫して担当できる体制への移行を進めている。ダイハツも完全子会社化することでトヨタとの一体感を高め小型車の開発から生産までを、より機動的に行える体制を構築する考え。



 

 
日刊工業新聞電子版2016年1月29日自動車に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
系列部品会社の再編や環境車対応などトヨタの経営改革のスピードが上がってきている印象。章男社長にも販売台数が1000万台を超え、それに対応した組織作りや企業統治へ危機感が強いのだろう。個人的にはデンソーなど超有力部品メーカーとの関係をどうするか、気になる。

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