神鋼の鉄骨造向け溶接ロボット、オンリーワン技術でじわじわ引き合い増える

省エネ技術の新工法確立。溶接工の人手不足が追い風に

 神戸製鋼所の鉄骨用溶接ロボットシステムの販売が堅調だ。煙や火花の発生を抑え、エネルギー消費も削減できる新しい工法を実用化したこともあり、ビルや大型施設など鉄骨造のコラム柱の溶接用途に普及が進んでいる。今後も人手不足に伴う溶接工の減少が予測されるため、ロボットの適用範囲の拡大に注力していく方針だ。

 「リーマン・ショックで売り上げが落ち込み、我慢の時期が長かったが、2012年ごろから回復してきた。15年度も好調だ」。溶接事業部門企画管理部の梅山恭一次長は、こう言って昨今の販売状況に表情を緩める。

スパッタの発生量を大幅抑制


 けん引するのは10年に開発した「REGARC(レグアーク)」と呼ぶ新しい溶接工法。それまでシールドガスに安価な二酸化炭素を使う場合、ヒューム(金属が蒸発した煙)やスパッタ(火花のように飛び散った金属)が大量に発生するという課題があった。レグアークでは溶接材を対象物に溶着させる際の液滴を小さいまま、規則的に落とし込むことで、ヒュームとスパッタの発生量を大幅に抑制する。

 ヒュームが減ることで作業環境が大きく改善。また、スパッタが減ることで、それを削り取る作業が軽減される上、「ノズルの先端にも付着するので、その量が減ればノズルの交換頻度も減らせる」(松村浩史企画管理部次長)ことで生産性が格段に向上。さらに独自のプロセス制御で電流値を低くでき、エネルギー消費量は約5%削減される。

 「市場に出して5、6年たつが、いまだほかにはないオンリーワン商品」(同)と胸を張る。発売後2年で一通りの溶接ロボットシステムへ搭載を完了。現在は顧客の8―9割がレグアークを選ぶという人気ぶりだ。

小さな加工業者も使って!


 溶接材からソフトウエア、ロボット、アフターサービスまで一貫して手がけていることも神鋼の強みの一つ。「独自のノウハウがいるので、ほかにロボットメーカーが出てこない。それにリーマン・ショック以降、何社か撤退したが、当社は溶接材も手がけているので撤退する必要がなかった」(同)と振り返る。

 建築市場では建物の高層化に伴い、コラム柱の大型化が進んでいる。「柱に使う角形鋼管の厚さは9ミリ―40ミリメートルだが、最近は60ミリメートルも出てきた」(同)ことから、さらなる重量物への対応が求められてくる。

 一方では「小さな加工業者にも使ってもらいたい。狭い工場で自動化をどう提案するか」(同)にも知恵を絞る。究極の目標は実際の建設現場への導入。「柱だけでなく、梁もある。これから溶接工も減ってくるので、ロボットが幅広くカバーしないといけない」(同)と、将来に向け多様な開発テーマに挑んでいる。
(文=大橋修)

日刊工業新聞2016年1月29日ロボット面
日刊工業新聞電子版

村上 毅

村上 毅
02月01日
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建造物の高層化や使用鋼材量を減らすために、コラムの大型化が進んでいる。それだけ溶接する箇所や溶接する量も増えるわけだが、溶接する作業員の確保が課題となる。新しい素材の採用には、使う環境とセットで求められており、溶接ロボの導入は進みそうだ。

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