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2020年のロボット五輪種目は「災害対応」「人と協調」

2020年のロボット五輪種目は「災害対応」「人と協調」

がれきなど障害物を円滑に移動できるかを競う種目などが候補(国際ロボット展NEDOブース)

 ロボット革命イニシアティブ協議会は、2020年開催の国際競技大会「ロボット五輪」の競技種目について、災害対応ロボットと、人と協調しながらサービス業などで働くロボットを対象とする方針を固めた。競技を通じて技術向上や実証につなげるなど、実用性重視の大会とする。開催概要は今春にもまとめ、18年に開催の前哨戦「プレ大会」に向けて世界に告知する。

 種目は球技など娯楽性の高いものより、米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する原発・災害対応ロボット競技会「DARPAロボティクスチャレンジ」のような実用性重視のものにする。がれきなど障害物や扉を円滑に移動できるかを競う種目などが候補。
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人型ロボットの開発は止まってしまうのか?


日刊工業新聞2015年10月05日


産業応用と技術革新の間でNEDOが抱えるジレンマ。弓取修二部長に聞く
 日本の人型ロボット開発が厳しい局面にある。米国防高等研究計画局(DARPA)が開いた災害対応競技会(DRC)で、世界最高のロボットでも実用化には遠いことを示してしまった。日本では人型よりも用途ごとに特化した専用ロボの開発にかじが切られている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はDRCの後継大会を日本で開き、2020年のロボットオリンピックの柱に据えようと構想していた。ロボ五輪に向けた競技検討についてNEDOロボット・機械システム部の弓取修二部長に聞いた。
 
 ―20年のロボ五輪は18年にプレ大会を予定しています。開発期間がありません。DRCのように人型用の競技を踏襲しますか。

 「開発期間を考えると16年には競技を周知する必要があり、ロボット革命イニシアティブ協議会で議論中だ。ロボ五輪では産業応用を見据えたロボットを発信する。企業が参画し、日本が各ロボットビジネスのプラットフォーム機をとることが狙いだ。人型用の競技にはならないだろう」

 ―最先端技術を統合する人型は日本のお家芸です。現在も優秀な人材を集める研究領域をしぼませませんか。

 「日本が人型の開発を止めることはあり得ない。ただNEDOが支援するにはジレンマがある。我々の開発投資は数年で実用化することが前提だ。人間と同じ大きさで二足歩行する人型は20年時点でも実用化は厳しいだろう。企業の開発者に聞いても投資効果を示せる段階にはないようだ。粛々と開発を続けて技術を積み上げることが重要で、我々がミスリードすれば、その継続も危うくなる。我々は要素技術開発や人材育成などを支援する。科学としての研究投資にも期待したい」

 ―五輪はスポーツのイメージが先行してしまいます。人型でないロボ五輪の競技とは。
 「スポーツはミスリードだ。ロボットが生活や産業に役立つ姿を示したい。トヨタのHSRのように生活を支援できれば腕は1本でもいい。DRCのように、国がプラットフォーム機を買い支えて研究者に提供すれば、企業は量産コストを計れ、プラットフォーム機として用途開発を促せる。目にもとまらぬ速さで、機械を組み立てるロボットなどは見た目も面白く、技術としても高度だ。ピッキングシステムとして市場も見込める。本年度中に議論をまとめて競技を提案する」
 
 【記者の目/ロボット政策の手腕問われる】
 DRCの競技は現場に即していないと災害対応ロボの研究者から批判が挙がった。DRCの後継を狙った「ジャパンバーチャルロボティクスチャレンジ(JVRC)」では、災害対応の研究者が競技を設計したため人型ロボには難しい課題が並ぶ。JVRCをそのままロボ五輪に展開する路線は見直され、ゼロから競技を設計する。国際大会として世界の研究者を巻き込み、市場性を示して企業の参画を呼び込む。極めて難しいが、米国と同じ轍(てつ)は踏めない。ロボット政策の手腕が問われる。
(聞き手=小寺貴之)
日刊工業新聞2016年1月22日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
開催場所は福島県沿岸部などが候補のよう。

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