波乱・新興国市場!トヨタ、想定外の不振

自動車各社、我慢の時期はいつまで続くか

 新興国市場の失速は自動車メーカーにも影を落とす。現下の「我慢の時期」(自動車幹部)をくぐり抜けた先の成長を見据え、各社が事業体制を強化している。

 「IMVが期待したほど売れていない」。トヨタ自動車の1次部品メーカーはこうこぼす。「IMV」はトヨタの新興国向け戦略車シリーズ。タイやインドネシアなどで生産し2015年は11年ぶりに全面改良を実施した。部品メーカーに年産120万台規模と提示している大規模プロジェクトだけにトヨタ、部品メーカーともに大きな期待を寄せていた。

 ところが主力のタイとインドネシア市場は15年、それぞれ前年比10%減、15%減に終わり、厳しい環境に打ち勝てていない。

中長期の目線で


 大竹哲也トヨタ常務役員は「アジアで(市場の勢いが)戻ってこないということを慎重に見ていくというのが現状だ」と語る。15年12月にトヨタが主要部品メーカーに示した16年の販売台数計画(ダイハツ工業、日野自動車を除く)ではアジアは15年比4万台減の105万台。

 ただ17年には109万台と回復の兆しが出てくるとの見通しも示した。大竹常務は「タイもインドネシアも中長期的には発展の可能性にあふれた市場。今は事業基盤の強化を進め、市場回復に合わせてパフォーマンスを上げたい」と中長期目線で新興国攻略に挑む。

日産は逆張り


 ブラジルとロシア市場はもっと深刻だ。15年はそれぞれ前年比30%近く減った。16年も低迷が続くとの見方が大勢。過酷な環境で日産自動車は”逆張り“の動きをみせる。ブラジルではレゼンデ工場に7億5000万レアル(約220億円)を投じ、新型小型スポーツ多目的車(SUV)の生産を始める。ロシアでは14年末にサンクトペテルブルク工場の年産能力を従来比2倍の10万台とし、主力SUV「エクストレイル」の現地生産を始めた。

 両国の市場低迷は現地通貨の下落が大きい。完成車生産の現地化は為替リスクから身を守るための王道だが、日産は部品調達の現地化も急ピッチで進める。両国で生産する車両の現地調達率目標を前倒しで達成しようとしている。通貨安になるとコストがかさむ輸入部品の調達を減らすためだ。現地で生産を拡大してきた仏ルノーなど提携先とのスケールメリットを生かす考え。

 「保有台数が少ない新興国は経済発展に伴って市場が拡大する」(カルロス・ゴーン日産社長)。自動車各社が中長期の成長を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

※日刊工業新聞では各業界別に「波乱・新興国市場」を連載中

日刊工業新聞2016年1月21日1面
日刊工業新聞電子版

池田 勝敏

池田 勝敏
01月22日
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記事には触れてない中国市場について、2017年以降は不透明だ。2015年10月から自動車取得税の減税措置が始まり市場が急回復した。減税措置は16年末までで、16年内は明るい見通しだが「需要の先食い」との声が業界内でも多く反動減が懸念されている。
(日刊工業新聞社編集局第一産業部・池田勝敏)

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