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フィンテックの動向は?りそなホールディングス東和浩社長が描く、未来の銀行像

フィンテックの動向は?りそなホールディングス東和浩社長が描く、未来の銀行像

東和浩氏

 ―ITと金融の融合による技術革新を指す「フィンテック」が盛り上がっています。
 「2013年に社長に就任してから、『これからの競争相手は銀行だけでない』と社員に話してきた。驚きも違和感もない。15年は『フィンテック』の言葉が定着した年で前哨戦。今年は基礎となるテクノロジーに金融機関が本格的に参入する年になる」
 
 ―新しい金融サービスが生まれる機運が高まります。
 「データベースマーケティングの流れが出てくるだろう。例えば、今まで銀行は車を買うと意思決定した消費者にサービスを提供してきた。これからは購買行動を予測して、先回りして情報を提供することで取引につなげなければいけない。効率性と精度をいかに高めていくか。データベース解析が重要だ」
 「IT企業と分析手法のノウハウを蓄積している。外部と連携するのは、もはや常識の世界だ。ただ、我々はテクノロジーの中身について本物かどうかはわからない。意思決定のスピードを上げて、16年は地域限定で実証実験をやって(サービスが適用するか)どんどん試したい」
 
 ―フィンテックが台頭することで、人的能力の重要性が増すと指摘されてきました。
 「銀行が生きる道はフィンテックだけではない。テクノロジーは日々進歩している。明日のデファクトスタンダード(事実上の標準)は分からない状況で、半年後や1年後には全く違う世界が待っている。技術の独占もできなければ、価格競争にもさらされる。いかに人的能力を高めていくかが重要になる。銀行の収益はコンサルティングなどヒューマンタッチが握るようになる」
 
 ―テクノロジーの進展で、銀行のあり方も変わります。
 「テクノロジーがどう影響するか見極めてビジネスとして成立するところに注力する。銀行の形は変わっても、人のお金の悩みはなくならない。何に困っているかがわかれば、そこにビジネスチャンスは必ず存在する」
 
【記者の目/オムニチャネル戦略推進】
 フィンテック旋風を「当然の流れ」と語るように、社長就任以降、経営にテクノロジーを活用する重要性を社内外で訴えてきた。オムニチャネル戦略を掲げ、インターネットを利用した取引の効率化や現金処理の機械化などに取り組む。テクノロジーへの関心が高いからこそ、技術進展でも決して機械化できない業務が透けて見えるのだろう。東社長にはフィンテックが銀行を変えた後の銀行像が見えている。
(文=栗下直也)
日刊工業新聞2016年1月7日金融面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「フィンテック」と一括りにされるものの、銀行各行がフィンテックの先に見据える銀行像はさまざま。今年は違いが見えてくる一年になるかもしれません。

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