「眠っているものに命吹き込む」佐賀県知事インタビュー

山口祥義氏「技術・伝統、世界に発信」

 佐賀県の山口祥義知事が就任して14日に1年を迎える。2015年度補正予算では「ものづくり人財創造事業」を創設して、学校や企業の人材支援を強化している。また16年は有田焼誕生400年のメモリアルイヤーとして、国内外で佐賀の技術や伝統をPRする絶好の機会だ。「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」をスローガンに掲げる山口知事に、2年目にかける意気込みを聞いた。

 ―1年目の手応えを教えてください。
 「佐賀の素晴らしさを再認識するため県内を回り、多くの意見に耳を傾けた。そこで改めて佐賀県の可能性を感じた。例えば着任してすぐ誘致企業から人材の質の高さを褒めていただいた。自然災害の低さや交通アクセスの良さは認識していたが、その視点は新鮮だった。本県は幕末から蒸気船や反射炉の建造などモノづくりのDNAが息づいている。ヒトづくりによって企業の付加価値を高める流れをつくりたい」

 ―15年11月に世界に誇る県内企業20社を「第1回佐賀さいこう企業」として表彰しました。
 「縁の下の力持ちのような素材型企業が多い。例えばシリンダーなど自動車や造船の製造に欠かせない機械部品を作っている。一方で、地中に埋まり見えない世界遺産として有名な『三重津海軍所跡』のように、その素晴らしさを宣伝できないのはもったいない。そこで誘致企業だけに目を向けるのではなく、地場企業を積極的に表彰し県民に知らせていくことが大切だ」

 ―16年のテーマは。
 「情報発信という観点で『有田焼誕生400年』をPRしたい。400年前は伊万里焼の名前でヨーロッパに輸出していた。最近は伝統を残しつつ現代風にデザインした『1616/Arita Japan』というブランドが国内外で人気になるなど、時代やニーズに合った姿に変化している。伝統品だけでなく、全国に先駆けて進める海洋エネルギーの普及やミドリムシを使ったバイオマス燃料開発など技術革新に取り組む。それが県の進むべき方向でもある」

 ―2年目に向けた抱負を教えてください。
 「16年は1年目で得た経験を形として証明する。具体的には眠っていたものに命を吹き込む年にしたい。県内の中小企業をとりまとめる佐賀県工業連合会も成長へ意欲的だ。企業の融合・連携促進を支えていきたい」

【記者の目/新旧イノベでモノづくり再興】
 佐賀県は有田焼を象徴とした伝統技術だけでなく、次世代エネルギー研究など新旧のイノベーションが加速する。またBツーB(企業間)で表には出にくいが、産業界を支える工作機械メーカーも多い。アジアに近く九州の交通の要所という地理を生かした企業誘致だけでなく、地場企業のさらなる成長をサポートできるのか山口知事の手腕に期待したい。
(文=増重直樹)

ファシリテーター・永里善彦氏の見方


 “葉隠”の佐賀は謙虚で能力があるのに発信力が弱い。幕末の佐賀藩主鍋島斉正は蒸気船や反射炉を製造し、その技術を母方の従兄弟にあたる島津斉彬に教えた。先人性とモノづくりに理解のある人だった。

 実は、1月9~10日佐賀市で開催の「東シナ海と稲作漁労・弥生文化」シンポジウム(立命館グローバルイノベーション機構主催)に参加した。佐賀は外国の先人性技術の導入に熱心だった。古くは朝鮮渡来の吉野ヶ里の弥生文化に始まり、400年前の朝鮮人陶工の有田焼製造、そして幕末の蒸気船/反射炉/西洋化軍隊の育成など枚挙に事欠かない。このDNAを持つ佐賀は全国に先駆けた海洋エネルギー普及やバイオマス開発に挑戦する。地方創生に資する試みで大いに期待したい。

 加えて県のパイを大きくするには、市場創生の視点も必要だ。閑古鳥が鳴く空港近辺に大型アウトレットモールを誘致し(岸本九州経済産業局長談)、外人客を呼込む方策など検討すべき点は多い。

日刊工業新聞2016年1月13日 中小企業・地域経済1面
日刊工業新聞電子版

三苫 能徳

三苫 能徳
01月14日
この記事のファシリテーター

もちろん人材育成は大事ですが、隣県や大都市への人材流出を防ぐことも必要。とはいえ人に縄はつけられませんから、県内企業に目を向けさせるための魅力アップが必要です。「さいこう企業」の表彰はその目的の一つなのでしょう。
知事の言う「眠っているもの」が企業も指すのかわかりませんが、当然個々の企業は眠っているわけではなく各業界では知られている。むしろ一般的な視点の中で“埋もれて見える”だけで、要は見せ方の問題なのだと思います。東京向けに特産品と有名企業をコラボさせる企画に力を入れていますが、そういう新しい手法を使ってみるのも一つではないでしょうか。

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