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「CES」で見せつけた次世代自動車と、その進化を支える半導体

「CES」で見せつけた次世代自動車と、その進化を支える半導体

米クアルコムは車載用半導体「スナップドラゴン820A」を公開(スティーブ・モレンコフ最高経営責任者)

 米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」は、自動車が主役だった。自動運転をはじめとする最新技術が次々と披露され、車メーカーの勢いを印象づけた。こうした車の進化を支える存在として半導体メーカーが台頭していることも見逃せない。

 その代表格が米半導体大手のエヌビディアだ。自動運転には走行中に車がとらえた周辺環境など大量の画像データを処理する必要があり、同社が得意とする高速画像処理技術が必要になってくるからだ。

 そこでエヌビディアは新たに自動運転用の車載コンピューターを開発。スウェーデンのボルボ・カーへの採用が決まった。エヌビディアの担当者は「自動車関連会社の来場者が増え、私たちの技術に非常に高い関心を持っていることが今回のCESで強く感じられた」と指摘した。

 スマートフォン向け半導体に強い米クアルコムも車載向けで攻勢をかける。自動車がスマホのような通信技術を必要とするようになり、同社の半導体が横展開できるからだ。スマホ向け半導体をベースに開発した車載向けの「スナップドラゴン602A」は、アウディが17年に発売する車への搭載が決まった。

 すでに602Aよりさらに処理能力が高い「同820A」の開発を完了しており、アウディへの採用を皮切りに、自動車メーカーへ拡販を狙う。アナログ半導体メーカーの米マキシムはADAS分野に活路を見いだし、四つのカメラが撮影したデータを高速処理し、1本のケーブルで通信できる製品の開発を強化している。

 2016年も自動運転やADASなどの技術の高度化に向けてさまざまな動きが活発化しそうだ。CESでの発表はなかったが、米グーグルはフォードと自動運転分野での提携について交渉しているとみられ、注目されている。自動車開発の新たな競争軸が生まれる中で、スピード感をもって勝負できるように業界内外を問わず、企業の合従連衡も起きそうだ。IT関連の異業種や半導体メーカーの存在感も高まっている。未来のクルマに関わるメーカーの顔ぶれが広がっている。
(文=ラスベガス・下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年1月12日深層断面面から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
スマホ向けで力を付けた半導体企業が目立つ。制御系半導体(例えば日本ではルネサスなど)メーカーとどのように交わっていくか注目。

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