中小企業が参入に苦労している医療市場で、成果が出ている理由とは

地方創生を支える!注目のベンチャー企業 #3 藤井製作所

 「新しい製品に挑戦すると、企業内の技術と人が変わる。時代や経営を取り巻く環境の変化が早くなる中、挑戦を続けることは早い変化への対応力を付ける手段でもある」。
 金属加工を主力としてきた藤井製作所は、合成木材、高機能樹脂パイプ、そして医療機器と新市場開拓・参入を続けている。藤井秀美社長は、そのモチベーションを変化への対応力と説明する。

危機感が開発を後押し


 藤井製作所はプレス、圧延、切削、研削などの加工技術、ワイヤ放電加工に加え押出成形など幅広い技術を持つ。1980年代は金属加工を中心に、自動車や工業用ミシン向け部材を製造。業績は好調だった。しかし、バブル経済が崩壊し、受注量全体も減少。また、自動車業界を筆頭に生産の海外シフトが顕著になる中で、新興国企業との価格競争も激化し、藤井製作所も危機感を抱いた。

 「新しい事業が必要」と思うタイミングで、柏市から産業支援策への応募の打診があった。環境をキーワードとした新製品開発支援プロジェクトで樹脂と木粉を使った複合材、合成木材を開発。「社内に培っていた押出技術がカギとなった」という。

 次に開拓したのが光ファイバーのさや管。ファイバーを保護する管だ。松戸商工会議所から紹介された案件を、実用化した。さらに、このさや管を展示会で見たガソリンスタンドの設備会社から、地下に埋設するガソリンバリアー性を持つパイプの開発案件が持ち込まれた。こうしたパイプは当時、米国製を輸入しており、国産化が期待されていた。
 合成木材の開発から協力してきた日本大学の教授とともに開発に乗り出し、公的機関の支援策を活用して加工設備を購入。これを大学の研究室内に設置して、開発・試作を続けた。4年以上かけて完成にこぎつけたのが多層構造樹脂パイプだ。内層にガソリンバリアー性の高い機能性樹脂をコーティングした3層構造。外層にはポリエチレンを採用し、耐腐食性・耐圧性・耐震性を持たせた。多層化し、複数の機能を実現した樹脂パイプで、多くのガソリンスタンドで使われている。

 藤井社長は新分野での取り組みにより、人のつながりが広がったことに注目している。「何か新しいことをするたび、複数の新しい人に出会え、知識や技術のほか、人や企業のネットワークなど新しい何かをもたらしてくれた」という。

医療機器市場を開拓


 そうした藤井製作所が現在、新たに市場開拓しているのが、医療機器分野だ。医工連携で注目され、中堅・中小企業も参入を目指している企業が多い。藤井製作所には、同社のホームページを見た国立がん研究センターから声がかかった。がんの放射線治療の一つである陽子線治療で使う、ボーラスとコリメーターという器具だ。ボーラスは陽子ビームを、腫瘍の深さ方向の形状に合わせる器具で、「マシニングセンターで樹脂を高精度な3次元構造に加工する技術がいる」という。またコリメーターは不要な陽子ビームをカットし、腫瘍の水平方向の形状に合わせる器具。真ちゅうの高精度加工技術が必要で、ここではワイヤ放電加工が生きた。

 二つの器具とも患者ごとに製作することが必要で、ボーラスとコリメーターは1セットで使う。このため、「金属と樹脂両方の加工を、設計から金型製作、熱処理、表面処理まで一貫して行える体制が評価された」。

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