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見つかるかも!?「第二の地球」 望遠鏡・探査機の進歩で現実味

太陽系外の惑星観測進む
見つかるかも!?「第二の地球」 望遠鏡・探査機の進歩で現実味

マイヨール博士らが95年に太陽系以外で初めて発見した惑星の想像図(左、欧州南天天文台=ESO提供)

 宇宙に「第二の地球」はあるのか、地球以外に生命は存在するのか―。人類の長年の疑問に答えが出る時代が、望遠鏡や探査機の進歩によって近づいている。SF映画の宇宙人のような知的生命体に遭遇する確率は低いが、太陽系以外の惑星の大気を観測して植物がある証拠を調べたり、土星や木星の衛星で微生物を探したりすることが可能になりそう。世界の科学者が熱い期待を寄せる。

液体の水がある惑星「ケプラー」が多数発見


 太陽系以外で初めて惑星が見つかったのは1995年。ペガスス座の方向、約50光年離れた恒星の周りにあった。スイスのジュネーブ大教授だったミシェル・マイヨール博士らが発表した。

 熱く燃えて光る恒星に比べ、惑星は小さく暗いため、望遠鏡で直接観測するのは難しい。マイヨール博士らはフランス・オートプロバンス天文台の口径1・93メートルの望遠鏡を使用。惑星の影響による恒星のわずかな動きを、光の波長変化を捉える「ドップラー法(視線速度法)」で精密に観測、惑星の存在を突き止めた。

 それは木星のような巨大ガス惑星で、恒星の周りをわずか4日余りで1周。当時の惑星の概念から外れていた。マイヨール博士は2015年11月に京都賞を受賞した際の記者会見で「驚いた。半年かけて検討してから発表した」と振り返った。

 あれから20年余で発見された惑星は少なくとも2000個に上る。半分は米航空宇宙局(NASA)が09年に打ち上げ、地球の大気に邪魔されずに観測できるケプラー宇宙望遠鏡の成果だ。

 生命が存在するのは恒星から適度に離れ、液体の水がある「ハビタブル(生息可能)ゾーン」の岩石質惑星の可能性が高い。ケプラーは、はくちょう座の方向にある恒星を、惑星による明暗の変化を捉える「トランジット法」で観測。ハビタブルゾーンで地球に似た大きさの惑星を多数発見した。

 このうち15年7月に発表された「ケプラー452b」は、約1400光年離れた太陽に似た恒星の周りを385日で1周し、半径は地球の1・6倍。岩石質の可能性があり、誕生から約60億年経過していることから、生命が存在してもおかしくないとみられている。

生命の証拠探し、植物の光の波長手掛かり


 NASAはケプラー後継のTESS天文衛星を17年に打ち上げ、2年間で約50万個もの恒星を調べる予定だ。地球に似た惑星は約500個見つかると期待されている。

 第二の地球候補に、実際に生命が存在するかどうかを調べるには、惑星を直接観測する必要がある。そこでは、打ち上げの制約がある宇宙望遠鏡より口径の大きい地上の望遠鏡が活躍しそうだ。

 日本の国立天文台が米ハワイ・マウナケア山頂で運用する「すばる望遠鏡」は口径8・2メートル。約60光年先の恒星の周りを回る木星に似たガス惑星の観測に成功した。その近くに同天文台などが国際協力で建設し、24年ごろの観測開始を目指す超大型望遠鏡TMTは口径が30メートルもあり、惑星の大気や地表の様子を詳しく調べられる。

 マイヨール博士は「生命の存在を示す決定的な証拠を絞り込むには時間がかかる」と話すが、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター長の田村元秀東京大教授は「大気中の酸素やメタンなどの他、植物特有の光の波長が手掛かりになる」と説明する。

衛星地下に熱水環境。水蒸気に微生物の証拠も


 太陽系では火星の他、土星の衛星エンケラドス(直径約500キロメートル)やタイタン(同約5150キロメートル)、木星の衛星エウロパ(同約3100キロメートル)に微生物が存在する可能性がある。火星はかつて地表に液体の水があり、現在は地下に氷が残っていると考えられている。エンケラドスとエウロパは表面を覆う氷の下に液体の水があり、タイタンは大気と地表にメタンが多い。

 地球の深海探査が進んだ結果、海底から熱水が噴出している穴の周囲で、熱水に含まれるメタンや硫化水素などを利用して生きる細菌や貝類などが多数見つかり、太陽光が届かなくても生物が繁栄できることが分かった。海洋研究開発機構深海・地殻内生物圏研究分野の高井研・分野長は「地球で最初の生命は海底の熱水が噴出する場所で誕生した」と考える。

 エンケラドスの南極付近では、氷の割れ目から塩分や有機物を含む水蒸気が噴出していることが近年、米欧の土星探査機カッシーニの観測で分かり、熱水と岩石が反応してできる鉱物の微粒子も検出された。高井分野長は、エンケラドスに新たな探査機を送り、地下から噴出する水蒸気に微生物の証拠が含まれるか調べるべきだと提言する。

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日刊工業新聞2016年1月4日「深層断面」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
子どものころからUFOや宇宙人とかにはまったく興味はなかったのだが、こういうアプローチは夢がある。スターウォーズを観たばかりなのでテンションが上がっているし

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