“精密農業”に可能性、小規模農家にロボットを

ピンポイントで農薬や肥料、低コストで付加価値高める

 農業人口の高齢化と後継者不足に歯止めがかからない。対策の切り札として期待されるのが、ドローン(飛行ロボット)やアシストスーツ(作業補助装具)などを含めたロボット化だ。豪州や米国のような粗放的な農場ばかりでなく、集約が進まない小規模農場や中山間地でもロボットは有効だ。メーカーはこうした潜在ニーズを掘り起こすためにも、生産者と交流を深めてもらいたい。

 農林水産省の「2015年農林業センサス」によると、日本の農業従事者の平均年齢は67・1歳。65歳以上が占める割合は実に64・7%に達している。農作業は高齢者でもある程度可能とはいえ、10年後を見通せば悲観的にならざるを得ない。

 海外を中心に、生産規模の大きな農場でロボットが活躍する素地が整いつつある。日本でも、これまでの農水省などのロボット化イメージはヘリコプターで種モミをまいたり、複数のトラクターを夜間無人制御したりする例が多かった。今後はこれに加えて、小規模農家を対象とした省力型や軽労型のロボットのニーズが高まるのは間違いない。高齢化と平行して力仕事が不得手な女性の割合が高まれば、さらに市場は広がる。

 現在、大規模化が難しい中山間地や都市近郊の農家では、低農薬や有機農法をうたう付加価値の高い農産品や、複数の作物を少量栽培して価格下落リスクを防ぐ経営手法が主流となっている。こうした小規模農業にロボットは向かないと思われがちだ。

 しかし実際には、狙った場所にピンポイントで農薬や肥料を噴射し、コストを下げつつ商品力を強めるやり方もある。イネやキャベツなど汎用的な作物でも、品種によって栽培法や施肥の仕方は異なる。カメラやセンサーの精度向上と低価格化は、従来にない”精密農業“を可能にしつつある。

 こうしたきめ細かなニーズに対応し、専用ロボットを開発することが小規模農業向けロボット普及のカギとなろう。そのためにはメーカーが現場の悩みや声を聞くことが早道だ。農業の中にも、宝の山は眠っている。

日刊工業新聞2015年12月28日 社説

加藤 正史

加藤 正史
01月03日
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個人の営農が、トラクターの段階から次に踏み出せるか。難しい課題です。

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