堀場製作所、激動の1年を乗り越え「試金石の年」へ

創業者・堀場雅夫氏は亡くなったが、スピリットは脈々と引き継がれる

 堀場製作所にとって「激動」の2015年が幕を閉じようとしている。自動車車両開発のエンジニアリング・設計を手がける英マイラを傘下に収めたほか、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正を堀場の測定装置が検知して一躍脚光を浴びた。ただ、それ以上に強烈なカリスマ性を放った創業者の堀場雅夫氏の死去があった。

 今月初旬、京都市南区の堀場製作所本社で開かれた全社員の懇親会。「(堀場雅夫)最高顧問のスピリットを受け継いでほしい」。堀場厚会長兼社長は約930人の参加者を前にこうあいさつした。年末恒例で39回目の開催となった同社の大懇親会は本社を含む全国35会場で一斉に開かれた。

 テレビ中継を通じ、堀場社長のメッセージは参加した総勢約1900人の全国の社員らに伝わった。

 「毎年楽しみにしている」と笑みを浮かべるのは、16年のリオデジャネイロ五輪でアーチェリー日本代表に決まっている法務部所属の林勇気さん。年明けからは五輪本番に向けた練習で社を空けることが多くなるが、総務部所属でアーチェリーの同僚、足立奈穂さんとともに駆けつけた。自動車の計測機器開発に携わる新入社員の栗山怜子さんは「規模の大きさにびっくりした」と目を丸くする。

 一方、堀場製作所にとって15年は大きな節目となった。96年の血球計数装置製造の仏ABX、05年の独カール・シェンクの自動車関連計測事業などに続くM&A(合併・買収)として約155億円を投じ、英マイラを堀場グループに加えた。

 VWの不正問題で、検知の役目を果たした堀場の排ガス測定装置。同装置で世界シェア8割を握る同社にとっても「自動車関連をすべて網羅できる体制が整う」(堀場社長)と自動車テストコースも持つマイラのノウハウを生かし、自動車事業全般の拡大を狙う。

16年は「技術の遷宮」と位置づける


 ただ、こうしたトピックス以上に7月14日の雅夫氏死去は大きな転機となった。「おもしろおかしく」を社是に掲げ、同社のグローバル成長に道筋をつけた雅夫氏にすると、死去直前にマイラの事業買収を知り得たことは本望だっただろう。

 同社関係者は「しんみりとできないのがトップの宿命」と社長の立場をおもんぱかる。16年は「技術の遷宮」と位置づける大津市内の大型工場の本格稼働を控える。16年12月期連結業績への寄与も大きくなるマイラの事業を含め、堀場社長にとっても試金石の1年となりそうだ。

 懇親会が開かれたメーン会場前方の端に雅夫氏の写真がそっと置かれていた。堀場社長を中心に広がった談笑の輪に満足するかのように、その表情は破顔一笑だった。
(文=京都・林武志)

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日刊工業新聞2015年12月28日機械面
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明 豊

明 豊
12月31日
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昨日公開した「追悼2015」で堀場さんを取り上げたが、こういう創業者を持つ会社は幸せである。正月、堀場さんの名言で著書「イヤならやめろ!社員と会社の新しい関係」を読んでみようか。

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