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千葉市の浜辺を「都市型ビーチ」に!

文=熊谷俊人(千葉市長) 日本最大の人工海浜を活性化させる5つの具体策
千葉市の浜辺を「都市型ビーチ」に!

アイデアマンとして知られる熊谷千葉市長(右)

**日本最長の人工海浜
 (過去の連載で)2回にわたって幕張新都心についてご紹介したが、今回はその幕張新都心も面する海辺、浜辺の活性化について取り上げたい。

 千葉市と聞いて海辺、砂浜を連想する人は現状あまりいないと思う。ところが実は千葉市は日本最長の人工海浜(いなげの浜、検見川の浜、幕張の浜の計約4・3キロメートル)を持ち、東京都から最も近い海水浴場を持つ。

 歴史的にも埋め立て前は遠浅の海が広がり、文人墨客の別荘地として、また海水浴や潮干狩りのシーズンには東京から特別電車が数多く走り、大いに賑(にぎ)わっていた、誰もが認識する浜辺の街だった。

 埋め立て後にも海際に海浜公園を作り、さらにその先に日本で初めて、世界でも2番目に人工海浜を整備し、日本最長の人工海浜を抱えた。市民参加型で松林の植樹にも取り組み、白砂青松百選にも選ばれている。

 しかし、残念ながら浜辺に面した全てのエリアに大規模な都市公園を整備したために、外からは全く海や浜辺が見えず、公園を抜けて行かなければ浜辺にアクセスできなくなってしまった。また都市公園としての制約から浜辺の商業的利用が行われず、この日本最長の人工海浜は海水浴の時期や一時的なイベント以外ではあまり人が訪れない空間になっている。

 今、事実上未開拓のこの浜辺を活性化させる取り組みが千葉市で始まっている。東京から最も近い都市型ビーチとしての活用だ。

幕張にサッカー施設


 来年3月には稲毛ヨットハーバー隣接地に民間資本を投入し、シーサイドレストランやビーチサイドの結婚式場など複合施設がオープンする。

 また、幕張の浜に隣接する幕張海浜公園は日本サッカー協会(JFA)のナショナルフットボールセンターの整備が2018年をめどに進められることになっており、隣接する千葉ロッテマリーンズの本拠地である「QVCマリンフィールド」と合わせ、集客力とブランドイメージ向上に大きなインパクトがあると期待されている。さらに、白砂青松百選に選ばれた松林の活用も進め、松林内に遊歩道を整備した。

 千葉市の浜辺は東京から至近であるほか、西側を向いているため、海に夕日が沈む美しい光景を望むことができる。海越しの富士は古来より浮世絵にも描かれてきた。最近では富士山に太陽が重なる「ダイヤモンド富士」を海越しに見られるとあって人気だ。

球場や歴史文化生かす


 私たちは今後三つの浜辺、二つの海浜公園の特徴に応じてゾーニング戦略を持ち、民間資本を積極的に導入しながら浜辺および海浜公園をリニューアルする方針だ。

 具体的には、(1)QVCマリンフィールドやJFAナショナルフットボールセンター(仮称)を核に、複合的なスポーツ・レクリエーションサービスを提供するとともに、海辺の眺望を楽しめる「ボールパークの海辺ゾーン」(2)人工海浜や海浜公園、周辺地域を繋ぎ、空間的な連続性を演出して回遊性を高めることで海辺エリアの一体化を図る「プロムナードの海辺ゾーン」(3)ヨットやウインドサーフィンのほか、新たなマリンスポーツを通じて、海に親しみ、海を楽しめる「マリンスポーツの海辺ゾーン」(4)海岸の自然や歴史文化を感じられ、ビーチと一体となった広大なオープンスペースのある「歴史の海辺ゾーン」(5)レジャープールや各種スポーツ施設が立地し、ファミリーを中心にスポーツ・レクリエーションが楽しめる「ファミリーレジャーとスポーツの海辺ゾーン」―を整備する。

 こうした新たな方針を「海辺のグランドデザイン素案」として作成・公表し、多くのご意見やご提言をいただきながら策定作業を進めている。民間や市民の方々との意見交換を経ながら、千葉市ならではの都市型ビーチのライフスタイルを提示していきたいと考えている。
日刊工業新聞2015年12月28日 パーソン面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 日刊工業新聞では、著名な経営者や旬の人物が週替わりで執筆するコラム「卓見異見」を毎週月曜日に掲載しています。今回の記事は同コラムからの引用です。

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