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電子部品もデファクト争い、スマホ向け高周波デバイスで村田製作所がリード?

SAWかBAWか、それが問題だ
 【京都】村田製作所は特定周波数を取り出す表面弾性波(SAW)フィルターで、スマートフォンに必要な帯域の大半をカバーする技術を開発した。バルク弾性波(BAW)や薄膜圧電共振器(FBAR)だけしか対応していなかった周波数帯「バンド25」(B25)向けへ、2016年春に量産を始める。さらに16年に始まる3・5ギガ(ギガは10億)ヘルツ帯の通信サービス向けにも、量産技術を確立した。SAWフィルターでは難しいとされてきた高周波対応などを進め、BAWやFBARからの置き換えを進める。

 米スプリントがスマホで使うB25(1900メガヘルツ帯)では送受信間の帯域が狭く、SAWフィルターよりBAWやFBARが特性で有利だった。村田製作所は新構造を採用したSAWフィルターを開発することで、それらと同等の特性を実現。生産プロセスは従来のSAWと同じなため、BAWなどよりも低コスト生産できる。まず自社の通信モジュールに組み込み、スマホメーカーへ供給する。
 
 加えて高速通信方式の「LTEアドバンスト」で新たに採用される3・5ギガヘルツ帯向けのSAWでも、量産にめどを付けた。5ギガヘルツは試作レベルでは対応できた。

 ただ同帯域では電波の直進性が高いうえ帯域もすいているため、積層セラミックスによる安価なLCフィルターで対応できる。そのため現時点ではSAWフィルターは投入しない。
 
 村田製作所はスマホ向けのフィルター部品では太陽誘電やTDKなどと競合する。両社ともSAWと、BAW/FBARの両タイプをラインアップするが、トップシェアの村田製作所はSAWに特化している。コスト競争力で勝るSAWの対応帯域を拡大することで、さらにシェア拡大を目指す。
日刊工業新聞2015年12月28日1面
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
VHSとベータ、液晶とプラズマなど、エレクトロニクスの世界では規格や技術のデファクト争いがつきもの。電子部品の世界も例外ではない。村田製作所がらみでは、かつて角形コンデンサーと丸形コンデンサーの主導権争いがあったとか。ここでの勝利が同社発展の礎となっているのは間違いない。それでは高周波デバイスはどのような結果に落ち着くのだろうか。

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