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ケーズHDが郊外型の出店を貫くのはなぜ?

ライバルの戦略を反面教師に。「ダブルスタンダードは持たない」(遠藤社長)
ケーズHDが郊外型の出店を貫くのはなぜ?

ケーズデンキはかたくなに郊外型店舗作りを貫いている

 家電量販店業界で、かたくなに郊外型の出店戦略を貫く企業がある。ケーズホールディングス(HD)だ。同じ郊外型で出発したヤマダ電機は都心部に積極出店、今年大量の閉鎖に追い込まれた。ケーズほどの規模なら都心に店舗を構えても不思議はないが、決して都心に出店しない。そこには経営戦略上の明確な理由があるようだ。

 ケーズの東京都内の店舗網をみると、都心に近い店舗は東京都江戸川区の「西葛西店」止まり。渋谷、新宿、池袋など都心部に多くの店舗を出店したヤマダ電機とは対照的だ。地方でも駅近くや中心部に店舗は少なく、都内と同じような出店戦略が多い。ケーズHDの遠藤裕之社長は「都心に出店するとなると(現在の郊外型店舗とは)まったく違うものを作らなくてはならない」として、こう続ける。

 「都市型の店舗(商品の政策では)家電だけを売っていればいいわけでなく食品だ、なんだと別の商品が必要になる。家電とは別のマーチャンダイザーが必要になる。コストもかかるし能力も別のものが必要だ」という。

 これに対し同じ郊外型モデルで出発したヤマダ電機はシェア拡大のため、23区内に都市型の大型店「LABI(ラビ)」を複数出店したほか、「郊外型店舗」も大量に出店。一時売上高が2兆円を超えるまでになった。

 都市型業態「LABI」の渋谷店、新宿店の出店のため土地、建物に投資した資金は「(郊外型の)テックランドの年間投資額に匹敵する」と山田昇社長が話すほどの大規模投資で都心に出店した。しかし、シェアを追い求めた結果、今年は不採算店46店を閉鎖、さらに11店の追加閉鎖や移転などを実行することになった。

 2012年にコジマを傘下に入れたビックカメラ。以降、不振だったコジマをビック主導でテコ入れしている。しかし、コジマの15年8月期は当期損益が63億円の赤字になった。ある家電量販店では「都市型の家電量販店であるビックは、コジマの再生に、都市型流の商品政策や運営方法を導入しようとしたのではないか」とみる。

 ケーズHDの遠藤社長が指摘するように、郊外型と都市型では商品政策などが決定的に違う。このため、ビックの宮嶋宏幸社長はコジマのテコ入れにあたって「地域の特徴をつかんで(コジマの商品政策の改革を)やる」と方針を改める発言をしている。

 ケーズHDの加藤修一会長は「社内に(都市型、郊外型の)ダブルスタンダードを持つべきではない」と強調する。家電量販店業界で駅前、都市型店舗の出店競争が過熱した中でも、郊外型に徹してきた同社の業績に大きなブレはない。
日刊工業新聞2015年12月24日生活面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
やはりどこで、どう売るかという小売業にとっての永遠の課題がありそうです。 来店客数が多い都市部の店舗と自動車などでの来店が多く、来店客数が少ない郊外型の店舗ではおのずと売るモノ、運営の仕方が違ってきます。もちろん、地域のニーズを取り込み商品政策に反映させることは大事ですが。。。

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