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早大が教育・研究財源に充てる新たな大学基金「エンダウメント」って何?

早稲田大学は寄付金などの資産を運用して教育や研究の財源に充てる大学基金の「エンダウメント」を展開する。同大は2018年に海外の未公開株が対象のプライベート・エクイティー(PE)投資を開始。すでにエンダウメント枠150億円のうち、70億円分を投資済み。このリターンが年8―9%で、23年度から入り始める。「この形式を本格的に手がける国内大学はほとんどない」(田中愛治総長)だけに注目を集めそうだ。(編集委員・山本佳世子)

早大の運用資産は20年度末の時価で1400億円弱。ミドルリスクの投資で年約5%のリターンがある。その一部を再投資してきた結果、運用資産は年1000億円の経常収入を上回る規模になっている。

運用資産に余裕があることから、リスク回避と流動性にこだわらない150億円のエンダウメント枠を設定。リターンの高いミドルハイリスクのPE投資を始めた。当初は手数料支払いのみだが、23年度からリターンが入る見込みだ。

システムは外部委託で、PE選定など投資のアドバイスを行うゲートキーパーを国内の金融機関が務める。同大も運用のプロフェッショナルを雇用し、理事会への報告を四半期ごとに行うなどリスク管理をする。年6―8%のリターンを目指す方針で、使い道として当年支出と再投資を半々とする計画。支出は研究支援、産学連携のエコシステム確立などを予定する。

日本の私立大学における資産運用はローリスクの国債などが中心だ。国立大学では運用のための余裕金が、東京大学などごく一部でしか用意できない。一方、政府で議論している「世界に伍する研究大学」で目標とする欧米の先進大学は、巨額のエンダウメントでのPE活用がトレンドとなっており、再投資と研究教育への両輪で成果を挙げている。

早大は大学評価機関の英クアクアレリ・シモンズ(QS)による世界大学ランキングと運用基金の相関を踏まえ、50年に運用資産3000億―5000億円を目標に据えている。

日刊工業新聞2021年11月18日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
早大は現在、1400億円を資産運用しており、年70億円ほどの収益がある。うち20-30億円は使わずに再投資に回し、国債・社債を中心に手堅く増やしてきた。余裕が出てきたことで、ミドルハイリスク・ミドルハイリターンに手を出せるようになったわけだ。もしもマイナスになっても元々、余裕金なので、大学・学校法人の経営に問題はない。幸いにして高いリターンが得られれば、それを教育・研究・社会貢献に使うさまざまな夢が描ける。さらにそこでの成果が、次の資金獲得に結びつく形を設計することになりそうだ。

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