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標準形状のナトリウムイオン二次電池開発、フランスの研究チーム

パソコンなどに使われる18650型、主に再生エネの蓄電池用途を想定
標準形状のナトリウムイオン二次電池開発、フランスの研究チーム

塩化ナトリウム(塩)と18650のナトリウムイオン二次電池試作品(© Vincent GUILLY/CEA)

 世界中でポスト・リチウム電池の研究開発が進められる中、有力候補の一つに挙げられるのがナトリウムイオン二次電池だ。ナトリウムはリチウムに比べて地球上に極めて豊富に存在し、コストが非常に安いメリットがある。11月末には、フランスの研究チームが、ノート型パソコン向けリチウムイオン電池で標準の18650型(直径18mm、長さ65.0mm)と同じサイズのナトリウムイオン二次電池を開発したと発表した。標準形状のナトリウムイオン二次電池は世界初という。

 この電池を2年がかりで開発したのは、フランス国立科学研究センター(CNRS)とフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)、およびフランス電気化学エネルギーデバイス研究ネットワーク(RS2E)に所属する6つの大学・研究機関。電池1kg当たり90ワット時のエネルギー密度を持ち、初期のリチウムイオン二次電池と同程度の性能という。充放電の回数も、性能が大幅低下する前に2000サイクルを超えたとしている。

 ただ、電極の正極はナトリウムとしながらも、負極の活物質は「企業秘密」として明らかにしていない。それでも申請特許によれば、負極はチタン酸ナトリウム(Na2Ti3O7)をベースにした層状の構造としている。

 次の段階では、電極素材の最適化や信頼性の向上を進める。ただ、テスラモーターズの電気自動車(EV)が18650の汎用リチウムイオン電池を何千個も使っているのに対し、今回のナトリウムイオン二次電池の試作品は、EVで使える二次電池のエネルギー密度には及ばない。電荷担体(キャリア)としての効率でもリチウムに劣り、電圧が0.3ボルトほど低くなってしまうという。そのため、コストの安さや拡張性を生かし、主に再生可能エネルギー用の蓄電池としての用途を見込んでいる。

 IEEEスペクトラムで報道されたCNRS研究者の話によれば、将来の商業化をにらんで、いくつかの企業とすでに提携に向けた話し合いに入っているという。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
ナトリウムイオン二次電池をめぐっては、日本でも自動車への適用を含めた研究開発が進められている。その一方で、スタートアップ企業の英ファラディオン(Faradion)はオックスフォード大学と共同で、開発したナトリウムイオン二次電池で電動自転車のデモを今年実施したという。とはいえ実用化はまだ先の話と見られ、リチウム電池の天下はしばらく続きそうだが、こうした競争も手伝って、引き続きナトリウム電池の性能向上が見込めそうだ。

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