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"ミドリムシ燃料”製造コストのハードルはまだまだ高い!?

米海軍は藻類由来のジェット燃料をリッター当たり数十ドルで購入
"ミドリムシ燃料”製造コストのハードルはまだまだ高い!?

出雲ユーグレナ社長㊧と殿元清司全日本空輸専務

 ユーグレナは1日、微細藻類「ユーグレナ(和名ミドリムシ)」を原料とする航空機燃料(バイオジェット燃料)とバイオディーゼル燃料の製造設備を2018年前半に稼働すると発表した。全日本空輸やいすゞ自動車の協力を受けて20年までに有償飛行と公道走行を実現する。ミドリムシのバイオジェット燃料への採用は世界初。投資額は約30億円で、当初年間125キロリットルの製造能力で始め、その後、約400倍程度まで拡大し商業化する。

 製造設備は、旭硝子の京浜工場(横浜市鶴見区)内に9000平方メートルの敷地面積を借りて設ける。設計と調達、建設は千代田化工建設が担う。

 バイオジェット燃料は米ASTM規格に準拠させる。全日本空輸は同燃料を10%程度混ぜ、路線と便を特定して運航。伊藤忠エネクスと横浜市も参画する。「この素晴らしいメンバーで実現できなければもうできない」(出雲充ユーグレナ社長)というオールジャパンで臨む。

ファシリテーター・永里善彦氏の見方


 全世界で排出される温室効果ガスの2%が航空分野から排出され、国連のIPPC(気候変動に関する政府間パネル)によると、航空のCO2排出量は、2050年には現在の2~5倍になる。国際航空運送協会(IATA)は2050年に05年比でCO2排出量を50%削減する目標を掲げている。国交省及び経産省は7月、「2020年オリンピックに向けたバイオジェット燃料の導入検討委員会」を立上げた。バイオジェット燃料に関し、世界では様々な原料の可能性が検討されている。
 
 ブルームバーグによると木材の熱分解でジェット燃料を大量生産すれば2018年には1ドル/リットル以下でできるが、2010年代中に藻類由来の燃料を大規模に製造する技術の見込みはないと予測している。因みに米海軍は現在、藻類由来のジェット燃料を数十ドル/リットルで購入している。
日刊工業新聞2015年12月2日3面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 大学発ベンチャーの成功事例として名高いユーグレナは、我々に夢を与えてくれるが、今回のミドリムシからのジェット燃料の製造はハードルが高い。

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