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日本のユニコーン「メルカリ」の快進撃はいつまで続くのか

文=山口豪志(デフタキャピタル アクセラレーター)CtoCフリマアプリの可能性と課題
日本のユニコーン「メルカリ」の快進撃はいつまで続くのか

代表の山田進太郎氏(メルカリのウェブサイトより)

 創業3年の企業の決算公示情報を目の当たりにして、「凄い!」という単純な賞賛を通り越して、尊敬というか、畏敬の念を抱いた。現在、日本で認知されている、おそらく唯一のユニコーン・ベンチャ―企業「メルカリ」。(※ユニコーンとは未上場でも評価額が10億ドル以上の企業)

 売上高42億円、売上総利益39億円。原価は実に3.3億円で約9割が利益という凄い仕組みなのだ。ビジネスモデルとしては、CtoC(個人店主がほかの個人の買い主と商売する)のフリーマケットアプリであり、個人の不要になったモノをスマートフォンの写真で公開しアプリをダウンロードして保有している約2000万人が購入する、という個人のモノを売り買いするプラットフォーム。

 おそらく、流通金額は1ヶ月で50億円を越える規模になってきているだろう。この成長軌道でしばらく伸びることを考えると、単月の流通金額は100億をすぐに越える規模になるはず。つまり、そう遠くない将来にメルカリのアプリが年間1000億円規模の流通金額を生み出すことになる。

 まさに、起業家が事業を描く際に理想だと夢に見る成長軌道を現実にやってのけたというわけだ。

 3.11の震災以降、起業ブームの流れの中で、メルカリほど、綺麗な軌道を描いて成長しているベンチャ―企業はいないのではないか。

 私自身、ほぼ同時期に同じような市場の中で働くものとして、彼らの手法や視点はすばらしく、偉業とも言ってもよいレベルだ。

強さ「3つのポイント」


では、なぜ、メルカリはこのような強いベンチャ―企業に成りえたのか、を考えてみたい。私見では特に3つが大きな要因ではないかと考える。

 ●マーケットの見極め方
 フリーマーケット自体は誰でも知っている販売形態であり、それほど珍しいものではない。またCtoCのマーケットプレイス自体はヤフオクはじめ、ニーズは顕在化していたもの。それをiPhoneを代表とするスマートフォンのアプリとして写真を撮って気軽に出品でき、スムーズに購入できる仕組みをつくったことが大きい。

 ●チームづくり
 それぞれ業界で活躍した人たちが集まり、得意分野を活かし自由闊達に力を発揮できる場が用意されている。組織力とタレント力がうまく機能している。

 ●お金の使い方
 創業してすぐに、大型の資金調達を実施し、そのお金を活用してTVCMを積極的に展開。それがしっかりと結果を出して、着実にダウンロード数を伸ばし、利用者を増やした。もちろん、採用においても十分な費用をかけ、年収が高くなっても人材に惜しみなく投資している。

  この3つ、「市場の見立て」、「人材戦略」、「資本政策」を実施できたのは、やはり経営者の力だろう。代表である山田進太郎氏のキャリアはまさに日本のベンチャ―企業の歴史といっても過言ではない。現在38歳の山田氏は、早稲田大学在学中(96〜00年)に、楽天で「楽オク」の立上げなどを経験。卒業後、ウノウ設立。「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネット・サービスを立上げる。2010年、ウノウをZyngaに売却。2012年退社後、世界一周を経て、2013年2月、メルカリを創業(同社HPより)。という経歴だ。

 シリアルアントレプレナー(連続起業家)というキーワードがここ数年散見されるようになったが、まさに彼はその代表格なのである。

 複数回の起業をした経営者ならではの過去の経験・知見、幅広い人的ネットワーク、そして冷静な市場観から下される判断によって、その時々に起こる課題に対して的確に対応できるのだ。

 急成長するベンチャーにおいては色濃く現れることだが、起業家である社長の器こそが会社の可能性を規定する。視座が高く、実行推進能力が高い40代前後の社会経験豊富な起業家が、私の周りのスタートアップでも確実に良い業績を上げている。

死角は無いのか?


ニュースイッチオリジナル
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
フォーブス日本版で2年連続で「日本の起業家」トップに輝いた山田進太郎氏。彼はあるインタビューで思想的にリバタリアンと語っている。いろいろなシェアエコノミーで世界をあっと言わせてほしい。

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