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トヨタが考えるパーソナルロボットの課題と可能性

玉置章文パートナーロボット部長インタビュー 「全ての人に移動の自由を」
トヨタが考えるパーソナルロボットの課題と可能性

玉置氏

 ―サービスロボットの実用化が始まりつつあります。状況をどう見ますか。
 「サービスロボットとの共存を山頂とすると現状は3合目で頂上が見えてきたところ。ある程度の機能を達成し、厳しい山道を越えている。もちろん、この先に胸突き八丁はあるだろう。価格を下げる、ニーズと供給のタイミングを合わせる、という問題は残っている。ただ機能面は、できることが増えたので実用化の進展への道筋はある程度見えたのではないか」

 ―トヨタ自動車のロボット研究開発の現状は。
 「『全ての人に移動の自由を』をテーマに取り組んでいる。多関節アームと自律移動機能を備えた生活支援ロボット『HSR(ヒューマンサポートロボット)』はベッドから動けない方などを考慮した。臨床的研究を進めているリハビリテーションをサポートするロボットは病気の方、施設などで活用しているパーソナルモビリティー『ウィングレット』は自宅付近のサポートを対象にしている。自動運転も広い意味で範疇(はんちゅう)に入り、自動車のチームとも連携している」

 ―米マサチューセッツ工科大学(MIT)などと人工知能(AI)研究で連携します。
 「米国に新会社を設置する。最高経営責任者(CEO)に迎えるギル・プラット氏はロボット研究の第一人者で顔も広く期待は大きい。意見交換の中でも、HSRはまだやるべきことは多く、今後AI的な取り組みで解決策を探ることで一致している。情報共有しつつ動きの獲得やコミュニケーション能力向上など全ての範囲で協力していくことになるだろう。AIの情報をオープン化するかはこれからの議論となる」

 ―ロボット展出展の狙いは。
 「我々の取り組みをしっかり知ってもらいたい。今回はHSRが中心。今夏に使い勝手を高めた新タイプを発表し、複数の研究機関等と連携して技術開発を推進するオープンな仕組み『HSR開発コミュニティ』も発足した。機能を見てもらいコミニティへの参加も促したい」

【記者の目/実用化へ“本気度”高まる】
 トヨタ自動車は他の企業や研究機関と連携してロボット実用化への課題を解決するオープン志向を鮮明にしており、実用化への“本気度”が高まったと感じる。ロボットは情報通信と違いハードへの設備投資が不可欠。大企業が体力を生かして研究開発を推進することが日本全体のロボット研究レベルの底上げにも必要だろう。
(聞き手=石橋弘彰)
※12月2日から東京ビッグサイトで「2015国際ロボット展」が開幕
日刊工業新聞2015年11月30日 機械・ロボット
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「3合目」という言い回しからは、トヨタが真剣にサービスロボット市場を見極めている本気度が垣間見える。AI研究との連携で実用化加速はもちろん、業界の牽引役としての立場もより一層求められそうだ。

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