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ITプロ人材が副業で高専教員に、ビズリーチで募集

ITプロ人材が副業で高専教員に、ビズリーチで募集

高知高専で行われている情報セキュリティコースの授業(同高専提供)

国立高等専門学校機構とビズリーチ(東京都渋谷区、多田洋祐社長)は、同社の転職サイトを使ったIT実務家教員の公募を20日始めた。IT分野のプロフェッショナル人材が副業・兼業で教員を務め、オンライン授業で指導する。実践的な知識と経験が豊富な専門人材が都市部に多いことから、オンラインで各地の国立高専の教育に活用。まずサイバーセキュリティー分野で教員募集を始めた。

高専機構は人工知能(AI)やロボット、IoT(モノのインターネット)などの教育拠点を構築しつつある。しかし技術の進展が早く、既存の教員では対応が追いつかないため、企業などでの実務経験を生かした実務家教員制度を導入した。

今回、全国51の国立高専で唯一、サイバーセキュリティー専門のコースを持つ高知工業高等専門学校(高知県南国市)で教員2人を公募する。20日にビズリーチの転職サイトで“副業先生”の愛称で募集を始めた。

採用されたIT実務家教員は現職の教員と組んでカリキュラムを設計し、11月から授業を始める。高知高専の「情報セキュリティコース」5年生(約25人)向けの科目で、セキュリティーリスク分析・評価や改善手法の立案など3―5コマ分をオンライン授業で受け持つ。ロールモデルとして3年生向けのキャリア教育にも関わる。

今後は他の高専や分野でも実務家教員を公募し、各地の高専でカリキュラムを拡充していく。谷口功高専機構理事長は「将来は学生が所属校を越え、横断的に学べる仕組みにつなげていきたい」としている。

日刊工業新聞2021年7月21日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
プロフェッショナルとして力を付けて年長になり、「教育に関わってみたい」と希望する社会人は少なくない。しかし大学の非常勤講師はハードルがそれなりに高い。某一流国立大学では米大手ITのアジア担当役員(日本人)さえ、「博士号を持っていない」との理由で、教授会を通らなかったという。その点、学術研究の実績より実社会での実務経験を重視する実務家教員は、多くの人にとってチャンスだ。博士人材が高等教育の教員を志望する場合は、JSTのJREC-INなどを使うことが多いが、ビズリーチなら目にする人材の範囲もはるかに広い。初回はセキュリティーに限定されているが、高専機構は公募の対象を広げていく方針だ。「へえっ、自分はITキャリアで転職をと思っていたけれど、高等教育に 関わる道もあるのか!」という発見は、興奮すること間違いなしではないか。

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