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コロナで大逆境のスポーツジム。生き残り策はジムに通わない人の健康支援

コロナで大逆境のスポーツジム。生き残り策はジムに通わない人の健康支援

コロナ禍でリアルのジムは苦戦を余儀なくされた

コロナ禍、売上高3割減 コンサルなど4事業体制に

東急スポーツオアシス(オアシス、東京都渋谷区、粟辻稔泰社長)は、ジム運営依存からの脱却を急ぐ。6月に「ウェルビーイング総合カンパニー」への転身を掲げ、新たに自宅用の健康グッズを販売するホームフィットネス事業、オンラインで運動を楽しむデジタルヘルス事業、企業や自治体に健康管理を助言する健康経営コンサルティング(BツーB、BツーG)事業を設定。ジム運営と合わせ、4事業体制とした。ジム通いをする人が人口の約4%と限られる中、ジムに通わない人の健康も支援し、生き残りを図る。(大城麻木乃)

【倒産・廃業】

「あらゆる人がいつでもどこでも健康になれる状況をサポートしたい」。粟辻社長は、6月に4事業体制に移行した理由をこう語る。

コロナ禍でジムに通う人は激減し、2020年度のフィットネス(スポーツジム)事業者の倒産・廃業は、過去10年で最多の26件に増加した(帝国データバンク調べ)。オアシスの同年度の売上高も前年度比約3割減の140億円に減少。退会者が前年度より4割も増えたことが響いた。足元もコロナの流行が続く中、収益減少を食い止めるべく打ち出したのが4事業体制への移行だ。

すでに種まきは始まっている。ホームフィットネス事業では、座って揺れるだけで腹周りを鍛えられる健康グッズ「コアツイスター」を自社の電子商取引(EC)サイトで販売。7月からタレントのアンミカさんを起用した動画投稿サイト「ユーチューブ」を配信し、拡販に乗り出す。

デジタルヘルス事業では、66万人の利用者がいる運動動画配信アプリケーション(応用ソフト)「ウェブジム」を7月に刷新。ログインごとにメダルがたまるなどゲーム要素を加え、継続を促す工夫を施した。

またプロのアスリートのように、個人が運動トレーナーや食事トレーナー(管理栄養士)、メンタルトレーナー(臨床心理士)などに指導を依頼し、複数のトレーナーとチームを組んで理想の健康体を目指すオンラインサービス「ウェルタッグ」も近くリリースする。

【健康プロ参画】

健康経営コンサルティング事業では、長野県富士見町の健康プロジェクトに参画し、器具を使わないで筋力を鍛えられるプログラム「ラクティブ」の提供を始めた。粟辻社長は「ジムは敷居が高かった。今後は頑張らないで体を鍛える方法も伝えていきたい」と強調する。

21年度の売上高は当初計画で前年度比4割増の約200億円を見込む。だが、4―5月に緊急事態宣言の発令で、対象地域のジムは休館を余儀なくされた。リアルのジムはまだ苦戦が続く中、残り3事業を早期に収益の柱に育てることが求められる。

日刊工業新聞2021年7月14日

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