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スマホなどの特許使用料をアプリ事業者が負担も、特許庁が検討

特許庁は自動車やスマートフォンなどに使われる特許に対し、最終製品を利用してサービスを提供する事業者にもライセンス料の負担を求める制度設計を検討する。例えば動画配信サービス事業者などが同一特許から利益を得ているにもかかわらず、メーカーのみがライセンス料を負担する仕組みに不満の声がある。有識者会議の結果を踏まえ、特許法改正を視野に入れる。車載通信サービスなど次世代ビジネスが進展する中、議論の行方が注目されそうだ。

法制化により他国に先んじて国内でイノベーション創出に適した環境が整うことが期待される。

2022年3月までに合計3回の有識者会議を開き、国内外の企業や弁理士事務所、大学などへの聞き取り調査などと合わせた報告書を取りまとめる。議論次第だが、配車アプリや飲食宅配サービスなども対象になる可能性がある。

部品や要素技術などの特許を持つ特許権者は、特許が使われる最終製品の価格の一部をライセンス料として受け取るなどの方法で発明の対価を得る。現行制度では製品が市場に出回った時点で特許の権利が消え、最終製品を利用したサービス事業者にライセンス料の負担を求めることが難しい。

そこで最終製品の使い方に関し、特許の権利が消えない要件を議論する。権利が消えない範囲内で事業者全体に広く薄くライセンス料を負担してもらい、メーカーだけの過大な負担を減らす狙いだ。

特許の権利が消えない要件が法律に明記されれば、企業がビジネスを始める際に特許侵害などのリスクを予見できる。欧米ではサービス業を含む事業者全体にライセンス料を負担させる法制度はない。通信技術の進展に伴い、車が他の車やインフラなどと通信し相互連携する「V2X」など、新たなサービスが生まれる。

市場価値に見合った正当なライセンス料が特許権者に支払われるような法整備も検討会で議論する。こうした仕組みが機能すれば、発明者が所属する企業や大学が特許で得たライセンス収入を次の研究開発に回すといった好循環が生まれると期待される。

日刊工業新聞2021年7月12日

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