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立命館大が目指す“運動の生活カルチャー化”

順天堂大と連携、スポーツ健康技術を創出へ
立命館大が目指す“運動の生活カルチャー化”

血圧などの生体信号を計測できる「スマートウエア」

 立命館大学は16日、大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)で報道機関向けに、文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI)」の研究発表会を開いた。立命館大は2015年度から21年度までの7年間、COIで生活の質(QOL)を高めて運動を日常化させる取り組みなどを実施する。

 順天堂大学などと連携する研究では、東洋紡が開発中の着るだけで血圧などの生体信号を計測できる「スマートウエア」を活用し、新しいスポーツ健康技術を創出する。筋肉や骨の機能低下による「ロコモ(運動器症候群)」の進展を防ぐ体調管理通信システムや、「アンチロコモサプリ」の開発にも乗り出す。

 立命館大スポーツ健康科学部の伊坂忠夫教授は「運動の”生活カルチャー化“につながる取り組みを確立したい」と述べた。

文科省、東京五輪を契機に対話型の政策形成を指向


日刊工業新聞2014年10月9日


 東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年を、文部科学省はスポーツだけでなく科学技術、教育や文化のターゲットイヤーに位置づけている。先進・成熟国にふさわしいコンセプトづくりでは、バックキャスト思考や対話型政策形成などに注目。新手法を使いながら、科学技術をはじめとするイノベーション創出の“五輪ソフトパワー”強化を進めていく。

 五輪のスポーツ以外のソフトインフラ担当として、文科省はこのほど官房政策課に「対話型政策形成室」を新設した。さまざまな利害関係者(ステークホルダー)の対話から政策をつくる手法を推進するのが目的で、その最初のモデルケースとなるのが東京五輪だ。

 同課評価室が事務局となって1月にまとめた「夢ビジョン2020」で、すでにその手法を試行している。多数のワークショップを開催し、研究者や企業人、アーティスト、市民、省内職員ら約1000人の夢や意見を集約。大会のキーワードとして「感動」「対話」「成熟」を決めた。

 ボトムアップ重視、「安心安全」前面に

 政策立案に関しては通常、現在を起点とする「フォアキャスト」思考が一般的。「行政がすべきこと」を積み上げ、予算や制度・規制により「トップダウン」で浸透させている。一方、夢ビジョン策定で採り入れたのは、将来あるべき姿から見つめ直す「バックキャスト」思考だ。「国民一人ひとりの意識」を高め、異分野の対話から政策を導く「ボトムアップ」を重視。政府によるリードではなく、ボランティアや異業種の横のネットワークによるソフトパワーを生かす次世代型だといえる。

 五輪を機とする科学技術のアピールに関しても、新興国のように技術力の高さを見せつけるのではなく、「成熟社会の安心・安全技術など日本らしさを出したい」(文科省官房政策課)。そのため、発信するテーマも安全な高速移動システムや、災害の多い日本ならではの観測・予測技術、スマートなエネルギー確保と供給などが挙げられている。

 安心・安全という切り口では、最先端技術のベネフィットに目を奪われがちな新興国型ではなく、リスクも含めて国民が議論する先進国型の科学技術コミュニケーションを重視。また、社会実装技術をバックキャストで考える研究開発は、文科省が13年度に開始した大型事業「センター・オブ・イノベーション(COI)」で初めて本格的に導入された。異分野の人が集まり、予想外の発想を引き出すデザインシンキングも、産学官連携の次の一手を導く手だてとして注目が集まっている。

 これらの新たな視点や手法は、先進・成熟国で注目されている。五輪開催を日本らしい科学技術と社会のイノベーション創出につなげるものとしても期待が大きい。
日刊工業新聞2015年11月17日 科学技術・大学面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
どれだけ多くの人が「運動の日常化」に挑み、挫折してきたことか。運動を継続できないというのは、もちろん個々人の心の弱さも理由にあるのでしょう(私もその一人)が、働き方(見方を変えれば休み方)が変わらないかぎり、いくら「スマートウエア」のようなテクノロジーが進歩しても「運動の日常化」の実現は遠いのではないかと個人的には思います。スミマセン、ネガティブなコメントで。でも、いくら優れた「スマートウエア」が登場しても、今の文化のままでは、結局買うのは「日頃から健康意識が高くて毎日運動する人」にとどまってしまうような気がしてなりません。

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