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今年、ハロウィーンが盛り上がった中国消費の新たな潮流

イオングループ中国本社社長・羽生有希氏に聞く 「一人っ子政策撤廃で、子供関連は今後伸びる」
今年、ハロウィーンが盛り上がった中国消費の新たな潮流

11月1日に営業再開した中国・天津市「イオンモール天津TEDA」

 ―中国の消費動向について、どのように見ていますか。
 「堅調に伸びている。経済が停滞しているといっても、国内総生産(GDP)の成長率は7%近い。日本国内と同様に、中国の消費者も量から質へのシフトが起きている。オーガニック商品や安心・安全を訴求した商品の伸びも良い。『安ければ売れる』ではなく『(品質が)良くなければ売れない』流れが大きくなっている」

 ―他の小売業との差別化は。
 「地場の小売業の能力が高くなっている。日本の店舗で売れている商品や香港の店舗で売れている日本商品などを投入できるのは、(グローバル展開している)イオンならではの強みだ。中国の消費者の食に対する安心・安全への関心は高まっており、イオンの扱う商品への信頼性は高い。特にイオン店舗でしか買うことができない、プライベートブランド(PB)は大きな差別化になっている。日本での開発プロセスと同様にモニタリングなどをし、使いやすく品質にこだわった商品を出していく」

 「従業員の確保については問題ない。ただ人件費が高騰しており、業務の効率をさらに上げたり、パートタイマーの比率を高めたりする必要がある」

 ―ショッピングセンター(SC)のイオンモールを、積極的に展開しています。
 「イオンならではの管理能力が生かせる。車社会の発達で、中間層の消費はさらに増えるだろう。北京・天津や広東省などのエリアでドミナント(地域支配)戦略を敷き、運営していく」

 ―注目している分野は。
 「中国共産党が一人っ子政策の撤廃を決めたことで、子供にまつわる消費は今後伸びる。行事にまつわる消費にも注目している。例えばハロウィーンについて、昨年は(中国のメッセージアプリの)『微信(ウェイシン)』上で、ほとんど話題にならなかったが、今年は盛り上がっていた。SCで子供の仮装コンテストを開くなど、インターネット上ではできない、実店舗だからできるコミュニケーションをしたい。モノだけではなくコトを売っていく」

【記者の目/実店舗ならではの提案重要】
 中国の社会消費財小売総額は前年比1割増で推移するなど、個人消費は旺盛だ。日系小売業にとっても、魅力的な市場であるのは変わりがない。第三次産業のGDPにおけるシェアは拡大傾向で、雇用の吸収口としての役割も大きくなっている。中国ではeコマース市場が伸びており、実店舗ならではの付加価値の提案がカギを握る。
(聞き手=江上佑美子)

 ※日刊工業新聞では「変調中国市場」を随時連載中
日刊工業新聞2015年11月19日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
とても興味深いインタビュー。日系の流通・小売りはまだまだビジネスチャンスは広がっていると感じる。爆買いに来た人をしっかりマーケティングしておこう。

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