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「オワハラ」問題は解消されるのか?就活6月解禁決定

異変は中小企業から。経団連、採用活動ルールを1年で再修正
 来年度の就職活動で、企業の採用選考の開始時期を今年の8月から6月に前倒しする経団連の方針について、全国の国公私立大学などでつくる就職問題懇談会が20日、事実上受け入れることになった。

 今年新たなルールを適用した経団連だが、企業や学生で混乱が生じ、わずか1年で再修正。”日本型経営“のひとつと言われた「新卒一括採用」は曲がり角に立っている。

 「一括で入社させるといった幸せな時代は終わった」―。経済同友会の小林喜光代表幹事は、日本独特とも言える新卒一括採用方式をこう疑問視する。

 大学生の学力低下を危惧した政府は、学業に専念させるという名目で、経済界に就活期間の後ろ倒しを要請。これを受けて経団連は選考活動の解禁を4月から8月に後ろ倒しし、就活期間の短縮を図った。しかし、結果は政府や経済界の期待を大きく裏切った。

 異変が起こったのが中小企業。従来は大企業の活動が終わった後に本格化する中小企業の採用活動だが、今年は逆転。中小が先行する逆転現象が生じた。これに経団連に属さない外資系や中堅企業も連動。この結果、大企業が採用活動を始めると、中小企業の内定者の辞退が続出し、「オワハラ」という問題も発生するなど、就職戦線は大混乱に陥った。

 これを受けて、東京商工会議所は、16年以降の採用活動の前倒しを要望。経団連も中小企業や学生に配慮する形で、ルールの再修正を余儀なくされた格好だ。

 経団連の2カ月前倒しがどこまで実効性を高められるかは不透明。「時期の変更だけで、現在、大学が抱えている問題を解決できるとは思えない」とある素材メーカー首脳は指摘する。

 新卒一括採用は「年功序列」「終身雇用」「企業内組合」とともに”日本型経営“の強みとされてきた。大量生産型の時代であれば、一括採用は十分機能したが、今やグローバルかつ高度な付加価値が問われる時代。欧米企業では通年採用が主流となっている。

 年功序列や終身雇用制度が揺らぐわが国において、新卒一括採用も転換期を迎えていることを示唆している。
日刊工業新聞2015年10月27日4面の記事を加筆・修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
いつも指摘されているけど企業以上に大学システムが変わらないと何も解決されない。

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