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「差異化・二分論」を乗り越えるには。COP21カウントダウンセミナーで議論

 気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の開幕が30日に迫り、都内でカウントダウンセミナーが開かれました(「環境・持続社会」研究センター主催)。COP21は約150カ国が参加する温暖化対策の国際的枠組みが合意される予定。新しい枠組みができるのは京都議定書が署名された97年以来です。

 セミナーでの登壇者・パネリストの発言はCOP21の争点に集中しました。「差異化・二分論」「実効性のあるルール」「資金援助」に争点は整理されるようです。
 
 差異化・二分論・・。先進国と途上国に分けて温暖化への責任に違いを付ける(差異化)。気候変動枠組み条約では先進国が途上国に資金援助を実施し、京都議定書では先進国だけが排出削減義務を負った。引き続き途上国は責任に「差異」があるとし、支援を求めている。

 ただ最近では「途上国」と言っても中国のような新興国、水没の危機にある島国のような脆弱国(島嶼国)に分かれており、脆弱国は新興国も責任を負うように求めている。途上国、新興国、脆弱国の線引き次第で援助を受ける側、する側に分かれる。

 実効性・・・・排出削減目標は各国が自分で決めた。今のところ目標達成は義務ではなく、未達でもペナルティーはないので、5年おきに進捗を確認して目標を引き上げる仕組みが必要という意見が出ている。

 中野潤也氏(外務省国際協力局気候変動課長)=COP21の日本政府の交渉担当官
 -差異化・二分論について
 「能力のある途上国(=新興国)にも責任を負ってもらえる交渉をしている。非EUの先進国は二分化をなくすことを求めているが、EUは各国の削減目標を高めることを重視しており、先進国でも違いがある。脆弱国の定義は難しい。定義をしようと言い出すと議論がストップし、まとまらなくなる」

 手塚宏之氏(経団連環境安全委員会国際環境戦略WG座長)
 -実効性について
 「自分で決めた目標なので達成意欲がある。(罰則のある)北風政策ではなく太陽政策が成果を出すだろう」

 亀山康子氏(国立環境研究所社会環境システム研究センター室長)
 -差異化・二分論について
 「日本政府にはみんなが納得できる制度を提案してほしい」。
 -実効性について
 「法的拘束力がないからやらなくていい訳ではない。日本政府には自分たちとして重要と考え、自ら決断して示していくことが大事」

 山岸尚之氏(WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダー)
 -差異化・二分論について
 「途上国・新興国がどこの国なのか、そこはかとなく暗示する文書づくりで日本政府には建設的に貢献してほしい」

セミナーを振り返って


 そもそも新枠組みに合意できるかどうかについては、楽観的な見方が多かったと思います。10月にドイツ・ボンで開かれた作業部会で公表された「議長提案文書」もセミナーで話題となりました。

 09年のコペンハーゲン・COP15では、論点が十分に整理されないまま本番に突入したこともあり合意に至りませんでした。コペンハーゲンでの失敗を繰り返さないためにボン会議の議長提案文書は20ページほどのシンプルなものでした。しかし途上国が自分たちの立場が反映されていないと反発し、50ページ以上まで増えた合意案が作られました。

 COP21も難航しそうですが「(合意案を読むと)どの国のことなのかがわかるので、フェアになったと思う。コペンハーゲンよりもよい状況」(山岸氏)。

 またCOP21では首脳級が会期前半に会場へ入るそうです。会期終盤にオバマ大統領はじめ首脳級が登場したCOP15とは逆です。中野氏によれば「合意のためのモーメンタリスイッチ(押しボタン)」。つまり各国の首脳が合意への指示を出し、交渉官に交渉へと臨ませるためだそうです。 
ニュースイッチオリジナル
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
法的合意なのか政治的合意にとどまるのか、など国際交渉ならではの駆け引きもあると思います。ただ、会議での日本の出番は少なそうな印象です。歴史的な会議です。先進国と途上国との間に入って議論をまとめるような役割は果たせなくても、日本の存在感を少しでも示してほしいです。

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