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インダストリアル・インターネットの普及で中国のGDPが1.8兆ドル増加?

ドイツ、米国はすでに動く。“国と国のつながり”で日本出遅れか
インダストリアル・インターネットの普及で中国のGDPが1.8兆ドル増加?

IoTは2020年までに中国で3,430億ドルの市場機会を創出

 物価の格差を調整した購買力平価でみれば、中国は今や世界最大の経済大国。日本に限らず、世界中のビジネスパーソンにとって、中国の動向は大きな関心の的であることは間違いない。そして、中国がこのナンバーワンの座を維持していくためには、インダストリアル・インターネットの活用も、ひとつの策となる。

 アクセンチュア社のレポートによれば、インダストリアル・インターネットが普及すれば中国の累積国内総生産(GDP)を2030年までに1.8兆ドル増加する可能性がある、とされている。現に2011年、中国はITセクター投資を目的とした約8億ドルの特別基金を創設した。

 また、遠隔地にいる医師から診断や処方を受けることができる「ヘルスカプセル」キオスクといったプロジェクトなど、モノのインターネット化(IoT)プロジェクトを推進するために、1億6千万ドル規模の国営企業「Chengdu Internet of Things Technology Institute」も設立した。

スマートグリッド投資、米国を抜き世界一に


 インダストリアル・インターネットの成果として、中国で期待されるもののひとつが、CO2排出量およびエネルギー消費量の削減だ。2013年、中国が世界のスマートグリッド投資額の約3分の1に相当する43億ドルを投資し、投資規模で米国を超え世界首位に立ったことはその一例。

 また、中国の年間建築量がシカゴの2.5倍に相当する点を考えると、急速な都市化におけるインダストリアル・インターネットの役割も大きいはず。例えば、車両を追跡し、渋滞に対処できるスマート街灯は、そのひどさで知られる上海などの“交通渋滞”を防ぐことも可能になる。

 IDC社の調査によれば、IoTは2020年までに中国で3,430億ドル規模の市場機会を創出する可能性があり、それまでに同国では5分の1のデバイスがIoTに接続されるようになると予想される。米ゼネラル・エレクトリック(GE)を含む外国企業が、この可能性に魅力を感じている。

 中国におけるインダストリアル・インターネット普及のきっかけとして期待されるのがスマートフォン。世界第3位のスマートフォンメーカー、Xiaomi(小米科技)は今年の初め、接続すればあらゆる家電をスマート化できる3.6ドルのモジュールを発表した。

 6月には、アイラ・ネットワークスが、中国の代表的なソーシャル・コミュニケーション・プラットフォームで、世界有数の成長速度を誇るWeixin(微信)を通じて、同様にデバイスをスマート化し、管理できるサービスを発表した。Weixinは中国最大のインターネットサービス・ポータル企業、Tencent(騰訊控股)が提供するサービスで、中国以外ではWeChatと呼ばれている。

 多くの中国メーカーは家庭用ボイラーや浄水器、スマートプラグ、スマートロック、スマートライトなど、Weixinで管理可能な製品の開発をすでに進めている。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
インダストリー4・0で主導的役割を担う企業はドイツなら、シーメンス、ボッシュ、SAPなど。米国ならGE、IBM。では中国でいうとどこになるか。国家電網、チャイナテレコム、そしてファーウェイあたりになるだろう。中でもファーウェイは今年5月にIoT向けのOSを開発、インダストリー4・0の分野でSAPと提携している。インダストリー4・0で常に先行してきたドイツ、しかも歴史的に中国の様々な規格は欧州のものが多い。今春、ドイツのメルケル首相が来日し、安倍首相とインダストリー4・0の分野で協力していくことで合意したが、早くドイツとの連携を官民それぞれで進めないと商機を失う。

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