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ダイセル、“タカタ離れ”でエアバッグのインフレーター設備増強へ

中国、タイなどが有力
 ダイセルの福田眞澄専務は6日、タカタのエアバッグリコール問題に関連し、エアバッグを膨らませるガス発生装置「インフレーター」のさらなる設備増強が必要との見方を示した。リコール対応部品の供給や代替需要への対応でインフレーター需要の増加を見込む。
 
 ダイセルは播磨工場(兵庫県たつの市)に8月にインフレーターの生産ラインを増設したほか、2016年春に米アリゾナ州に新工場を設ける計画。自動車各社から増産要請を受けていることから、これらの増強だけでは需要増にまかないきれないと見る。中国、タイでの設備増強が有力視される。
 
 ホンダなど国内の自動車メーカーがタカタ製インフレーターを新型車に搭載しない方針を示した件については、「新規ビジネスを受注できるよう営業活動を強化する」と述べた。
 
 ダイセルは13年度に6000万個だったインフレーターの販売を16年度に7800万個とする計画を立てており、今回の需要増で計画達成を確実視している。

 一方、トヨタ自動車の豊田章男社長は6日、都内で開いた会見で、タカタ製エアバッグの欠陥問題に関連し「タカタ製の(インフレーターに採用している)硝酸アンモニウムは今後使用しない」と話した。火薬剤の硝酸アンモニウムは異常破裂の原因との指摘がある。豊田社長は「タカタ製であっても他のタイプであって安全が確認できれば是々非々で考える」とも述べ、硝酸アンモニウム以外の火薬剤は採用する可能性を示した。

米国にインフレーター新工場


日刊工業新聞2015年2月23日付


 ダイセルは米アリゾナ州に、エアバッグを膨らませるガス発生装置「インフレーター」の新工場を2015年度末に稼働する。タカタ製エアバッグのリコール(無料の回収・修理)問題で交換用インフレーターが不足しているのに対応するため、新工場建設を当初計画より数年早めた。新工場の投資額は約100億円と見られる。

 米国ではケンタッキー州に次ぐ2カ所目の工場。生産能力は公表していないが、リコール問題に対応すると同時に、中南米など拡大する自動車市場の攻略を進める。

 12年に子会社化した、米スペシャルデバイシーズの工場隣接地に、新工場を建設する。米社が生産するインフレーター着火部品との相乗効果も目指す。

 ダイセルは現在、播磨工場(兵庫県たつの市)、中国、タイなど国内外6カ所でインフレーターを生産している。中期経営計画では、14年3月期に年約6000万個だったインフレーター販売量を、17年3月期に同7800万個に増やす計画を立てている。
日刊工業新聞2015年11月07日電子版
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
インフレーター市場はタカタとダイセル、スウェーデンのオートリブの3社でシェアの大半を占めるが、自動車メーカーはリスク分散なども含め日本化薬など「第4の勢力」と取引を拡大する動きが出てくる可能性もある。 一方でタカタは硝酸グアニジンを採用した自社製インフレーター以外に、オートリブなど他社製を調達してエアバッグ事業を継続させる考えだ。エアバッグモジュールの設計開発力などには定評があり、シートベルトを含めた総合的な安全技術に強みがある。タカタの売上高の約3割を占めるシートベルトは単独では差別化を図ることが難しく、シートベルト事業を続ける意味でもエアバッグ事業の継続は欠かせない。今後、エアバッグの新規受注を獲得できるかが焦点で、当面は綱渡りの経営が続く。

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