アップルの自動車開発、2008年にジョブズも検討

「iPodの生みの親」ファデル元副社長がインタビューで明かす

 2019年の出荷を目指し、電気自動車を開発中と噂されるアップル。実は、自動車分野への参入は2011年10月に亡くなったスティーブ・ジョブズ氏も生前、心に思い描いていたようだ。「iPodの生みの親の一人」ともいわれ、現在はアルファベット(グーグルの持ち株会社)傘下のネスト・ラブズを率いるトニー・ファデル氏が、アップルが車を開発したらどういうものになるか、CEOだったジョブズ氏とかつて議論を交わしたことをブルームバーグTVのインタビューで明らかにした。

 ファデル氏はアップルでiPod担当上級副社長を務めたあと、同僚のマット・ロジャース氏とともに家庭用サーモスタットのネスト・ラブズを2010年に設立、2012年にグーグルに買収された。現在は「グーグルグラス」後継の「グラスプロジェクト」も統括する。おもにハードウェア畑を歩んでいるが、アップルとグーグル両方の強みや戦略に通じた人物だ。

 ファデル氏によれば、2008年当時、ジョブズ氏と散歩しながら、「アップルが車を開発するとしたら、どういった車を作るか、ダッシュボードやシート、燃料はどういったものにするか」といった仮定の話を2、3回したという。だが、最後には決まって「われわれはとても忙しい。やるべきことがたくさんある。やれたら素晴らしいが、できないね」というところで話が終わり、結局、自動車開発には乗り出さないという経営判断が下された。

 当時は2007年にiPhoneを発表した直後。スマートフォンに会社の大半の精力をつぎ込み、ほかに複数の新規プロジェクトを検討していたことから、自動車開発に割り当てる時間も人も資金にも余裕がない状態だった。米国の自動車産業が厳しい状況に直面していることも参入をためらわせる理由となった。ただ、実際にはiPhoneを発表する2007年以前にもアップルが自動車開発を検討していたことを、マーケティング担当のフィル・シラー上級副社長が2012年の裁判で証言している。

 一方、ファデル氏は想定されるアップルの自動車事業参入について楽観的に捉えているようだ。「車を思い浮かべてみてほしい。それはバッテリー、コンピューター、モーター、機械構造を持つ。iPhoneも同じだ。モーターまで内蔵している。iPhoneをスケールアップすれば、なんと、同じような部品で車ができてしまう」と説明。スマートフォンと自動車は規模も機械構造も複雑さも大きく異なり、乱暴な話に聞こえるが、「こうした事実には、多少の真実がある」という。

 その上で、今後、「自動車開発で非常に難しいステップとなるのは車のコネクティビティー(接続性)や自動運転への対応といったソフトウェア、サービスの部分」と指摘。その点、ソフトウェアに大きく依存するアップルやグーグルは非常に優位な立場にあるとし、「あと7年から10年はかかると思うが、自動車業界に急激な変化が起こるだろう」とみている。

 とくに、グーグルの自動運転車については「素晴らしい。(自動運転車プロジェクト開発責任者の)クリス(アームソン)やセルゲイ(ブリン)と会って話したり、自動運転車を見たりするたびに圧倒されてしまう。まるでプロのドライバーのような運転をする」と手放しで称賛。「世間には車の運転の仕方を知らない人も多い。ウーバーもほかの人間に運転を委ねるという意味でいわば自動運転だ」とも話し、自動運転車の将来に期待を示した。

ニュースイッチオリジナル
ブルームバーグTVのインタビュー

藤元 正

藤元 正
11月07日
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 iPhone誕生の知られざる舞台裏や、スマートフォンをめぐるアップルとグーグルの激しいバトルを綿密な取材をもとに描いた『アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか』(Dogfight: How Apple and Google Went to War and Started a Revolution)いう素晴らしい本があります。そこではファデル氏が登場する、スマートフォンのOS開発をめぐる社内競争も山場の一つ。相手は一時ジョブズの後継と目され「ミニ・スティーブ」ともいわれたソフトウェア担当上級副社長スコット・フォースタール氏。当時のアップルを支えたスター2人による開発競争は結局、フォースタール氏に軍配があがりますが、彼との不毛な緊張関係がファデル氏が退社する大きな理由となったようです。

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