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三菱東京UFJ銀行、ベンチャー発掘を加速―株式公開、10年で20社狙う

ITと金融を融合した「フィンテック」対応目指す
 三菱東京UFJ銀行はベンチャー企業の発掘を加速する。今春に立ち上げた部署を中心に、今後10年間で20社の新規株式公開企業の創出を目指す。海外では米シリコンバレーの駐在員を近く倍増させ、ITと金融を融合した「フィンテック」に対応するため、自社への取り込みを図れる先端技術を洗い出す。目先の利益にとらわれずに長期的視点で、産業構造に変化を起こせる企業を支援する。

 新たに設置した「産業デザインオフィス」は融資目標を持たずに、ベンチャーの発掘育成を手がける。ライフサイエンス、ロボット、ITなど成長分野の業種から「未来のグーグルやアップル」の原石を探す。

 担当者は「(大学や研究機関、ベンチャーキャピタルなどと連携して)今後10年で1万社はみていきたい」としている。

 ベンチャー企業が持っているシーズを大企業に紹介する取り組みや、商品・サービスのマッチングを強化する。オープンイノベーションの場を提供することで、ベンチャーの成長を後押しする。10年で株式公開企業20社、売上高の合計10兆円規模を視野に入れる。

 「フィンテック」時代の到来を見据え、自行の技術の取り込みのためのベンチャー発掘にも本格的に乗り出す。シリコンバレーへの派遣人員を増員するほか、現地のベンチャー支援会社との業務提携も検討する。

 政府の成長戦略では国内産業の新陳代謝を促す狙いから、ベンチャー企業の育成を重点課題に掲げる。民間金融機関にとっても国内産業が先細りすれば、死活問題になる。短期的な利益ではなく、中長期の視点に立った産業の再整備につなげる取り組みが活発になりそうだ。
日刊工業新聞2015年10月23日 金融面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ベンチャー業界に強力な追い風が吹き続けていますね。実力のあるベンチャー企業を発掘するのもそうですが、ライフサイエンス、ロボットなどの分野では研究者が「起業」を意識するようになるかもポイントのような気がします。

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