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特許訴訟でアップル負かしたウィスコンシン大、発明者に2人のインド出身エンジニア

グーグル、MS、ノキア、話題のサンディスク…ITトップでも傑出するインド系
特許訴訟でアップル負かしたウィスコンシン大、発明者に2人のインド出身エンジニア

ソヒ教授(左)とビジェイクマール教授(右)(ウィスコンシン大学およびパデュー大学のウェブサイトから)

  米ウィスコンシン大学が起こした特許訴訟で先週、特許侵害を認定されたアップルに対し2億3400万ドル(約280億円)を支払うよう賠償命令が言い渡された。アップルはこれを不服として控訴する意向とされるが、告発者のリストに名を連ねていたのが、同大学の研究室でこの特許を発明した4人のエンジニア。うち開発を主導した教授を含め、インド出身者が2人いたことから、改めてインド系のIT分野での優秀さがクローズアップされている。
 
 この2人はグリンダール・ソヒ(Gurindar Sohi)教授と、テラニ・ビジェイクマール(Terani Vijaykumar)博士。ビジェイクマール博士は現在、米パデュー大学でコンピューター工学の教授を務める。

 今回、特許侵害訴訟の争点となったマイクロプロセッサーの効率と性能を引き上げる手法は、ウィスコンシン大学マディソン校のソヒ教授はじめ、当時博士号を取得したばかりのビジェイクマール氏、それに大学院生らが1998年に開発。アップルは同特許の有効性を否定しているが、ウィスコンシン州マディソンの連邦地方裁判所は、iPhone/iPadに組み込まれたA7/A8/A8Xプロセッサーにこの手法が使われ、ウィスコンシン大学の特許を侵害したとの判断を下した。
 
 発明者の2人はいずれも、インド・ラジャスタン州にあるビルラ工科大学(BITS)ピラニ校の出身。同大を卒業後、大学院教育を受けるために渡米した。実はこのほかにも、BITSは優秀なIT人材を多数輩出している。
 
 例えば、世界初のウェブメールサービスの一つで、のちにマイクロソフトが買収したホットメールの共同創業者サビア・バティア(Sabeeh Bhatia)氏や、電子回路設計(EDA)ソフトの米ロジックビジョンを創業し、2005年にインド初の半導体製造企業セミインディアを創業したビノッド・アガーワル(Vinod Agarwal)氏など。

 さらに、映像関連のハードウエアおよびソフトウエア開発の米ピナクルシステムズを創業したアジェイ・チョプラ(Ajay Chopra)氏、米IBMが誇るワトソン部門でゼネラルマネージャーを務めた起業家のマノジ・サクセナ(Manoj Saxena)氏らも含め、錚々たるメンバーがBITSの出身者だ。
 
 一方、最近ではインド出身の大手IT企業のCEOも目立つ。マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、グーグルのスンダー・ピチャイCEOを筆頭に、フィンランドのノキア、米グローバルファウンドリーズ、米アドビシステムズ、さらに身売り報道で話題の米サンディスクなどで、インド出身者が経営トップを務める。日本のソフトバンクグループでも、グーグルでシニアバイスプレジデント兼チーフビジネスオフィサー(CBO)を務めたニケシュ・アローラ氏が代表取締役副社長に就任し、孫正義氏の後継者とも言われている。

※米大学が特許侵害でアップルに勝訴、280億円の賠償命令
http://newswitch.jp/p/2368
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
「ゼロ」の概念はインド人が発明したとされる。そこで、「0と1でものごとを処理するデジタル技術で得られたビジネスの収益の半分はインド人のもの」という冗談さえあるほど。もちろん、経営トップになるにはITスキルだけでなく、将来のビジョンを示し、リーダーシップがあり、人を惹きつける魅力に溢れる、といった資質が必要だろう。古くはお釈迦様も出したわけだし、インド人にはそれらを備えている人材が多いということなのかもしれない。

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