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錦鯉、世界に泳ぎ出る!新潟の産地が海外攻勢

潜在市場中国で高まる人気、ベトナムにミッション派遣も
錦鯉、世界に泳ぎ出る!新潟の産地が海外攻勢

錦鯉は登竜門の言い伝えがあり、中国で人気化

 「NISHIKIGOI(錦鯉)」を海外に売り込め―。日本特産の錦鯉が今、海外から熱視線を注がれている。国内では庭のない住宅が増え市場自体は頭打ちだが、代わって錦鯉市場がジワジワと拡大しているのが海外だ。とくに有望なのが中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)だ。クールジャパンの流れもあり、日本の伝統的な商品が注目されるなか、錦鯉は世界に泳ぎ出る。

一匹数百万円の錦鯉を飼うのがステータスの時代も


 錦鯉はかつて究極の道楽といわれ、大きな池のある庭で、一匹数百万円の錦鯉を飼うのがステータスの時代もあった。しかし、国内は集合住宅が急速に増え、庭付き住宅が少なくなり、錦鯉を飼える機会が減るとともに市場は縮小していった。

 縮小する国内市場に代わって現在、注目されているのが海外市場だ。約10年前の2005、6年頃の輸出額は20億円(財務省の貿易統計を基に農林水産省が試算)を切っていたが、昨年あたりは「30億円以上になっているのはまちがいない」(新潟小千谷市の養鯉業者)とされ、ジワリと輸出市場が拡大しているのである。

 欧州ではかねて、カラフルで神秘的な錦鯉に人気があり、輸入関税の低いドイツ、オランダではかなりの輸入量がある。いったんドイツやオランダを経由して欧州諸国に輸出されているという。

中国への輸出伸びる


 欧州への輸出はそれほど増えているとまでいえないが、一方で明らかに増加傾向をたどるのが香港である。14年の輸出額は約11億2000万円となり、全輸出額の3分の1以上。10年前に比べると3倍以上の伸び率だ。

 もちろん香港だけで流通されているわけでない。香港から中国に渡っている錦鯉が相当量あるとみられている。中国は錦鯉の生体の禁輸措置をとっており、直接輸出できないからだ。

 中国は「登竜門」の言い伝えがあり、鯉は古来から立身出世や商売繁盛の縁起の良い魚として大事にされてきた。経済発展とともに、中国の富裕層で錦鯉が人気化したとみられている。関係筋によると、その潜在的な大市場、中国で錦鯉の輸入が解禁されるという観測もあり、国内の一大産地である新潟・小千谷の養鯉業者は大きな期待を寄せている。

 錦鯉の産地、小千谷が期待を寄せるのは中国だけではない。アセアン、とりわけ次の大国に成長するといわれているベトナムでは産地、小千谷として初めてベトナムミッションを結成し派遣する。

 11月に同国で行われる「ジャパン フェスティバル イン ベトナム2015」に小千谷市長、新潟県議、養鯉業者で構成する小千谷市漁業協同組合の役員らが参加し、錦鯉を国やホーチミン市の行政機関に売り込む計画だ。これに合わせ小千谷市養鯉漁業協同組合ではホームページを立ち上げ、外部アピールを積極化する。

 2020年に訪日外国人2000万人を目標に掲げる日本、この巨大化する訪日外国人の買い物パワーに対し、アピールできる埋もれた日本の伝統的な商材がまだまだあることを錦鯉は物語っている。
ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中国では登竜門の言い伝えがあります。竜門(黄河上流)を切り開いた急流を登り切った鯉がいたとしたら、それは竜になるというものです。このため鯉は立身出世、商売繁盛の縁起物として浸透しているそうです。果たして日本の錦鯉は中国で〝竜〟になるか。

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