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今日は敬老の日。家電で高齢者層の需要を取り込め!

各社の工夫と最新トレンド
今日は敬老の日。家電で高齢者層の需要を取り込め!

日立のLEDライト

 白物家電各社が高齢者の使いやすさを意識した製品を充実させている。近年、高齢者と同居する世帯数が増加しており、高齢者に配慮した機能・デザインの有無が家電を選ぶ際の重要なポイントの一つになっているからだ。メーカー各社の製品トレンドと取り組みを追った。

 【青緑色に着目】
 「室内で本や雑誌が読みやすいよう、”光の質“に徹底的にこだわった」(日立アプライアンスの開発担当者)。日立アプライアンスは10日、住宅用の発光ダイオード(LED)シーリングライトを発売した。従来品より文字や写真がはっきり見える独自の光源「ラク見え」を搭載したのが特徴だ。

 視認性を向上させるため通常の白色LEDに加え、新たに青緑色の光を発するLEDを採用した。一般的に人の眼は加齢に伴い青緑色が見えづらくなる点に着目。製品開発担当者は「青緑色のLEDで補完することで、老眼などにより見え方が大きく変化し文字が見づらくなっている人に最適だと思う」と製品の完成度に自信を持つ。

 このほか、パナソニックは50―60代の「シニア層」に照準を定めた家電製品シリーズ「Jコンセプト」の種類を拡充。洗濯槽を浅くし、体をかがめなくても衣服を取り出しやすくした縦型洗濯機などを7月に発売した。

 【文字大きく】
 三菱電機は12月上旬から発売するルームエアコン「霧ヶ峰Zシリーズ」の2016年度モデルで操作用リモコンを工夫。温度設定画面に業界最大の文字サイズ(縦26ミリ×横33ミリメートル)を採用し、これまで以上に文字を見やすくした。

 各社がこうしたシニア層を意識した製品づくりに力をいれるのは、高齢者世帯が急増しているからだ。総務省の統計によると、高齢者世帯は13年に2000万世帯を超えた。家電製品を購入する際、家族が高齢者の利用を想定して商品を選ぶ動きが出てきており「製品開発時によりシニア層が使いやすい機能やデザインを考える必要がでてきた」(日立アプライアンス設計担当者)と話す。

 こうした市場の変化を見据え、家電各社は誰にでも使いやすい設計のユニバーサルデザイン戦略の一環として、シニア層を想定した研究開発体制を導入。パナソニックは眼科医と共同で白内障の疑似体験ゴーグルを開発し、商品開発に取り入れた。製品表示やカタログ、取扱説明書をはじめとして見やすさや改善にいかしている。

 【競争軸の1つ】
 三菱電機は一般的な70歳の身体データをもとに、シニア層を標準にした独自の設計指針を策定。表示の見やすさや音声の聞き取りやすさ、身体的負荷への配慮といったポイントを重視し、商品開発に取り入れる。

 日本電機工業会(JEMA)の統計によると15年度の白物家電国内出荷額は、前年度比4・2%増の約2兆2000億円になる見通し。少子高齢化が進むなかで存在感を高めるには、従来品の機能アップはもちろん、シニア層に受け入れられる商品作りも新しい製品競争軸の一つになりそうだ。
(2015年09月21日 電機・電子部品・情報・通信)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
日本の家電メーカーは長く低迷している状況だが、こういった特定の層に刺さるような製品は得意だ。携帯電話は「ガラパゴス」だったが、日本が先陣を切り、将来的に世界のテーマとなる高齢者向け商品では、戦略次第で勝機が見えるようにも思う。

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