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「2015年度からは正念場」―大創産業社長・矢野博丈氏に聞く

「事業基盤整備、M&Aも視野」
「2015年度からは正念場」―大創産業社長・矢野博丈氏に聞く

矢野博丈氏

 100円ショップ「ダイソー」で急成長し、デフレ経済の象徴的存在と見られてきた大創産業(広島県東広島市、082・420・0100)。アベノミクスによる円安・インフレ志向で吹き始めた逆風にどう挑むのか。創業1代で売上高3763億円(2014年3月期)の新業態を築き上げた矢野博丈社長に聞いた。
 
 ―安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、どう見ますか。
 「実際に現場の作業をしたこともないような、心のこもってない人が『デフレは悪だ』といって経済を運営している。我々は創業してから40年間、いいものを安くしようと努力して商品を進化させてきた。デフレが悪だといわれると違和感があるし、ナンセンスだ。アベノミクスで株価が上がったって、株券を持っている人なんて少数派。庶民は喜ばない。お客さまを見ていると、商品が高くてもいいという雰囲気からはほど遠い」

 ―円安政策で100円ショップ業界にも影響が出てきますか。
 「2015年度からは正念場になる。これまでは過去の円高時代に大量に仕入れた商品の在庫で商売をしてきた。これからは100円では到底売れないような商品が次々と出てくる。商品を変えなければならないが、100円のイメージが根強いところに高額商品を増やすことがお客さまの期待に応えることになるかどうか。いいものを安く作ること以外に生きていく道があれば別だが」

 ―どう対策を取っていきますか。
 「分からない。“神のみぞ知る”だ。会社経営や人生には常に試練があり、耐えるしかない。これまでは、成長して資金に余裕ができてもずっと動かさず質素にしてきた。怖さにおびえてきた。それが今になって幸いしている。500億円をかけて、全国8カ所の自社物流センターとPOSシステムを整備してきたのがよかった。以前は何でも売れていた時代があったが、今は売れる物と売れない物とが分かれてきた。熟練のバイヤーでも何が売れるのかは分からず、ただPOSだけが分かる。POSがなければつぶれていた」

 ―小売業界にも大型再編が相次いでいます。どう見ますか。
 「日本はすでにオーバーストア過ぎるほどオーバーストア。みなさんしたくもない合併をして、大量に仕入れることのできる仕組みをなんとか維持しようとしている。これから生き残っていこうとすれば、努力だけでなく幸運に恵まれることが必要。どれだけ善行を積んできたかも大切で、自分だけがもうかればいいというやり方できた会社は厳しくなるだろう」

 ―M&A(合併・買収)に関心は。
 「若干はある。周りの環境に応じてみずからのあり方を変える『自己否定の哲学』こそ商売人には必要。単にくっつけばうまくいくとは思えないが、こういう時代にはM&Aを含めてどんなことでも考えていかなくてはいけない」
 
 【記者の目/逆境下での戦い、商売の中身カギ】
 物流センターに情報システム、さらにはタイのプラスチック製品工場、ベトナムの縫製製品工場と事業インフラを整えてきた。戦う事業基盤は整っており、逆境下であらためて問われているのは商品やサービスという商売の中身そのものだ。価格と価値で満足度の高い商品を今後も提供し続けられるか。矢野社長の言う「善行」の結果が問われる局面になる。
日刊工業新聞2015年04月10日 電機・電子部品・情報・通信面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「ネガティブすぎる発言」が一部ネットで話題になっている矢野社長。しかしこのインタビューからは、現実を直視してできることをしっかりやっていこうという姿勢が見られます。

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