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航空エンジン大増産に備える川崎重工の「本気」

「サプライチェーンマネジメント推進室」を新設
 川崎重工業は航空機用エンジン事業の急拡大を見据えて、ガスタービンビジネスセンター長直轄で調達改革を指揮する「サプライチェーンマネジメント推進室」を新設した。兼任を含めて総勢約20人。航空機エンジンの増産に対応するため、数年内に仕事量の3分の2(現状は約半分)を外注する方針を打ち出しており、工程外注先(サプライヤー)の品質管理や経営支援を行う専門部署を設け、長期・安定した取引関係を築く狙いだ。

3千億円事業へ


 川重の航空機エンジン主力生産拠点、西神工場(神戸市西区)。2012年に完成した第四棟には毎年、多くの機械・加工設備が導入され、50台近くのロボットを仕上げ加工に投入するなど活況を呈する。それでも「契約済み案件だけでも、2025年までは大きな伸びが見えている」(久山利之代表取締役常務ガスタービン・機械カンパニープレジデント)。

 川重は英ロールス・ロイスや米プラット&ホイットニー(P&W)の国際共同開発に参画しており、米ボーイング、欧エアバスの最新鋭旅客機の開発、量産計画に足並みをそろえる形で「25年には事業規模が14年比4倍以上になる」(同)。16年度以降に8種類の新規プロジェクトが本格量産に入る見通しで、25年には事業規模は年3000億円を超えるとみられる。

企業体力が必要


 民間航空機エンジン事業は初期投資が巨額なのに加え、整備・補修による投資回収に長い時間のかかる特殊なビジネスモデル。中長期の伸びは確実でも、一定の利益を確保しつつ、増産対応するにはサプライヤーを含めて相応の企業体力が必要。加工外注など生産連携を上手に使いこなすことが欠かせない。

 三菱重工業は民間航空機エンジン事業を分社し、同分野で国内首位のIHIや日本政策投資銀行からの出資を受け入れた。さらに低圧タービンブレードなどを対象にサプライヤーと一体となった新たな生産フローを構築。産業クラスター化を進める。

協力体制の充実


 こうした発想に行き着くのは必然だが、品質は最重要。川重が設計・製造・組み立てを担当する中圧圧縮機(IPC)モジュール。エンジンを構成する8個の主要モジュールの一つで、構成部品点数はおよそ4000点。これだけ見ても航空機エンジンの難しさが分かる。加工の外部委託は「リスクでもある」(久山常務)。

 川重はまず、加工難易度、重要度などに応じて各部品を4段階にランク分けし、サプライチェーンマネジメント推進室が加工外注先を側面支援しながら、力量、企業体力を評価し、低ランクのものから外注に出す。部品によっては、万が一を想定し「ロールス・ロイスやP&Wからダブル、トリプルソースを求められる」(同)ため、日本全国で新規取引先の開拓も進めてきた。

 川重や三菱重工などが進める調達改革は、航空機関連産業の裾野を広げる意味でも、大きな価値がある。国や地方自治体などの協力が一段と充実されれば、その成果は地域経済にも波及するだろう。

(文=鈴木真央)
日刊工業新聞2015年09月11日 機械・ロボット・航空機面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本の航空エンジン部品大手にはIHI、川崎重工、三菱重工(の子会社)の3社が挙げられます(ホンダも「ホンダジェット」向けでGEとエンジンを共同開発)。いずれも今後10年~20年といったスパンで成長が確実とみられています。ビジネスモデル的には1.初期投資が過大、2.アフターマーケット(整備や修理)を取り込まないととても儲けられない(つまり投資を回収するまで20年はかかる)といった難点がありますが、成長の確実性ではほかのどの産業にも劣らない「ザ・安定」のビジネスではないでしょうか。

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