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自動運転車ハッキングの新たな脆弱性明らかに

レーザーで人や障害物の偽信号を発生し、強制的に車を減速・停止
自動運転車ハッキングの新たな脆弱性明らかに

自動運転車がライダーを使って周囲の状況を確認している様子(グーグルのYouTube動画から)

 自動運転車についてのセキュリティーで、新しい脅威が浮上した。科学技術ニュースサイトのIEEEスペクトラムによれば、ネットワーク経由ではなく、自動運転車の屋根の上で周囲の状況をスキャニングするレーザースキャナー(ライダー=LIDAR)にレーザーでハッキングされる脆弱性があることがわかった。ハッキングされた自動運転車は減速したり、停止したまま動けなくなってしまうという。

 この問題を発見し、特定のメーカー製のライダーを使って実証した米国のコンピューターセキュリティー研究者は、「自動運転車を開発するメーカーに対し、警鐘を鳴らすため」と主張する。完全自動運転車が実用化されるまでに、技術的な対応が必要になるかもしれない。

 ライダーの脆弱性を指摘したのは、サイバーセキュリティー会社、米セキュリティーイノベーション(マサチューセッツ州)の主席サイエンティストを務めるジョナサン・ペティト氏。アイルランドにあるコーク・カレッジ大学で、コンピューターセキュリティーグループのリサーチフェロー時代に書いた論文で指摘した。

 レーザーといっても、スポーツ競技などでときどき見かけるような、レーザーポインターを人間などに直接当てるやり方とは違う。レーザーポインターに自動運転車のライダーは反応しないという。

 ペティト氏が試みたのは、市販のレーザーやパルス発振器を組み合わせ、わずか60ドルほどで組み上げた妨害装置。これを使って、車や壁、歩行者などの像とライダーが認識する偽の信号を自在に作り出し、自動運転車を錯覚させることができたとしている。近くに人や車がいると判断した自動運転車は減速し、さらにたくさんの障害物の信号をその周囲に発生させれば、実際の物体について検知不能状態に陥り、車は身動きができなくなってしまうという。

 詳細については、11月10日からアムステルダムで開かれるコンピューターセキュリティー会議「ブラックハット・ヨーロッパ2015」でプレゼンする予定だ。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
高速道路を走行中のクライスラーの「ジープ・チェロキー」がコンピューターセキュリティーの専門家に遠隔操作でハッキングされ、その結果、140万台がリコールに追い込まれたのは記憶に新しい。今回指摘されたのはインターネット経由ではない、センサー部分の脆弱性。対策として、例えば、それぞれ違う周波数帯の複数のライダーで回路を多重化し、物体の情報が正しいか照合するような工夫が必要になるのだろうか。

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