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飲食中のおいしさの指標「フレーバーリリース」“数値化”―島津、中小と連携で開発

揮発性成分拡散させず
飲食中のおいしさの指標「フレーバーリリース」“数値化”―島津、中小と連携で開発

揮発性成分を拡散させず、確実にイオン源に導入して分析

 【京都】島津製作所は飲食中に感じる香りの強さや広がりによって起こる「フレーバーリリース」について、中小企業と共同で質量分析システムを使った計測手法の開発に乗り出す。揮発性成分を拡散させず、確実にイオン源に導入して分析できる。従来は勘に頼りがちだった香りを数値的に把握する。“産産連携”の推進を通じて、共同研究先の食品メーカーが食品開発への早期の応用を目指す。

 フレーバーリリースは、口中の温度やかみ砕きにより食品の形状が変化して起こる。フレーバーの成分ごとに“挙動”が異なるため、食べた際の香りの変化を引き起こし、食品のおいしさを決める重要な指針になるという。

 島津製作所は2011年ごろから自社の高速液体クロマトグラフ質量分析計に、「DARTイオン化法」という手法によって直接的にイオン化できる米国のイオンセンス(マサチューセッツ州)の製品をユニット化し、販売している。国内では、このDARTを扱うエーエムアール(東京都目黒区)と連携している。今回、バイオクロマト(神奈川県藤沢市)が手がける揮発性成分のリアルタイムの分析が可能な「ボラタイムシップ」をシステムに組み込んだ。この装置を用いると、通常は大気中で拡散して感度が低下する成分を効率よくイオン源(試料をイオン化する部位)に導けるという。島津製作所は今後、自社の強みである分析装置と連動可能なアプリケーションを持つ中小企業などとの連携を増やす方針だ。

 エスビー食品開発生産グループ中央研究所の佐川岳人分析センターチーフは「瞬間的に変化する香りの仕組みを分析し、実際の食品開発に生かしたい」と話す。成果は9日、九州大学伊都キャンパス(福岡市西区)で開かれる日本分析化学会で、島津製作所やエスビー食品などのグループが「クミン粉砕時における香り立ちのリアルタイム計測」と題して発表する。
日刊工業新聞015年09月07日 科学技術・大学面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「過去50年でも素晴らしい出来」「ここ数年で最高」的なあいまいな表現をしなくて済むようになるのでしょうか。

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