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地方創生のけん引役を「学・官・金」がサポートするモデルを

肥後銀行頭取のインタビューから考える地域企業のマインドセット
地方創生のけん引役を「学・官・金」がサポートするモデルを

甲斐隆博頭取

 ―熊本経済の現況は。
 「基調はリーマン・ショック前のレベルと変わらない。企業城下町のような経済構造を持っていないので、比較的安定している。農業を基礎産業とした地域のため、大きくは振れない」

 ―地方創生にどのように関わっていきますか。
 「自立的に地場資本で活性化できる分野、持続可能なビジネスモデルを持つことがポイント。例えば地元産業で移出額が多い産業でいうと、農林水産業は、生産量を上げて付加価値を高めて売る仕組みをつくる。個人サービス業は、付加価値や魅力をそれぞれの企業が開発する。小売り業は、情報に基づいてどうマーチャンダイジングしていくか―といったことが必要。こうした取り組みをそれぞれに後押ししていく」

 ―具体的には。
 「地方創生は、地元中小企業単独では難しいと思う。努力のレベルが比較的限定されてしまうからだ。大手企業と協同してやる必要がある。そのコーディネートを地域金融機関が担う。グローバル経済を視野に入れて取り込むのであるなら、先行する大手企業の知恵やノウハウやルートを活用させてもらう必要がある」

 「そのためにも、グローバル企業と関係が薄くなった地域金融機関が、関係を再構築していく努力が必要だ。熊本県の農作物の輸出促進のため、2014年10月に県とヤマト運輸と当行で連携協定を結んだ。これが典型的な事例だ」

 ―どう企業を巻き込んでいきますか。
 「私の場合、熊本経済同友会の代表幹事としてもメッセージを発している。熊本商工会議所と共同で策定した『熊本都市圏将来ビジョン』に沿って活動している。例えば、グローバルな視野を持つ人材の育成のために、地元企業が資金を出し合い国の留学制度を採用して留学支援をしている」(おわり)

 【記者の目/“投資型統合”効果に期待】
 10月1日に鹿児島銀行との持ち株会社九州フィナンシャルグループが発足する。再編は救済型統合ではなく、将来に向けて新たなビジネスモデルを構築するための”投資型統合“であることを強調する。国内有数の金融機関誕生の効果が、株主だけでなく、地域や地元中小企業を始め金融サービスを受ける利用者にとって具体的にどのような形で反映されるのか期待される。(聞き手=熊本支局長・勝谷聡)

日南市役所・マーケティング専門官 田鹿倫基氏の視点


 地方創生は産学官金(企業、大学、行政、金融)が連携して進めていかなければ ならない、としばしば言われる。それについては、同意なのだが、その中で誰がイニシアティブをとるか、という のは非常に重要になる。地方創生予算が国から各地方に配分され、それを市役所や役場が一度受けて配分 することになるので、役所主導になりがちであるが、そもそも地方創生の肝はその地域で自立できるま ちづくりである。そのためには、経済の自立は必須であり、そこは事業観点から組み立てていかな ければならない。
 <以下コメント欄に続く>
日刊工業新聞2015年09月02日 金融面
田鹿倫基
田鹿倫基 Tajika Tomoaki 日南市 マーケティング専門官
 私は上記のような観点から「産」が牽引しなければならないと考えている。産業が自立し、地域経済を回していくために必要なサポートを他の学官金が行う というモデルが望ましい。事業から価値を創造することに明るくないが、予算を振り分ける行政がその地域 の地方創生を主導しているのであれば、正直、その地域の将来には暗雲が立ち込めていると言わざるをえない。地域の企業は行政に迎合してはならないし、行政は上手く企業に使ってもらうことが大切だ。

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