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夏の甲子園を考案した天才起業家の遺訓は「清く・正しく・美しく」

情報文化産業の父「小林一三」、
夏の甲子園を考案した天才起業家の遺訓は「清く・正しく・美しく」

小林一三氏

 本業を発展させながら、情報、レジャー、文化というコンセプトを次々に生み出し、グループ全体の付加価値を高める―。情報文化産業の生みの親が小林一三だ。今も根強い人気を誇る「宝塚歌劇団」、日本のハリウッドを目指した「東宝映画」、新聞社を巻き込んだ「夏の高校野球」といったイベントを考案し、ビジネスとして発展・成長させた天才的起業家である。

 阪急電鉄の経営を託された小林は、斬新(ざんしん)なアイデアで都市づくりに挑んだ。その一つが日本初の「ターミナル・デパート構想」。駅を商業施設と一体化させる事業は前例がなく、周囲では反対の声も聞かれたが、「素人だからこそ玄人では気づかない商機が分かる」と譲らず、事業を推進。その後、日本各地に広がった駅ビルを商業施設として活用し、まちづくりの中核に位置づける構想は小林のアイデアである。

 今も高い人気を博す宝塚歌劇団も小林が生み出した。三越少年音楽隊を範に、宝塚新温泉にあった温水プールの跡地利用の一環として考案。温泉場の余興に―との発想から始まった。現在も宝塚歌劇団に受け継がれるモットー「清く・正しく・美しく」は小林の遺訓。「宝塚歌劇の父」という顔も持つ。

 ダイエー創業者で多角的事業家であった中内功が全盛期、こんな話をしている。「わたしなんかがいくら頑張っても、しょせん、小林一三の掌(たなごころ)の上ですわ」。最大の賛辞であろう。(敬称略)

日刊工業新聞2015年08月28日 4面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
前のNHK朝ドラ「わろてんか」で、高橋一生が演じた伊能さんは小林一三氏がモデルと言われていますね。

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