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高さ20kmの「宇宙エレベーター」、カナダのベンチャーが計画

ロケット打ち上げのコスト低減手段に、通信や風力発電・観光用も想定
高さ20kmの「宇宙エレベーター」、カナダのベンチャーが計画

「ソスXタワー」のイメージ(同社のニュースリリースから)

 地上20kmもの高さを持つ「宇宙エレベーター」の建設に、カナダの宇宙関連ベンチャーが取り組んでいる。おもな使い道はロケットの発射台。7月には空気圧でタワーの構造を補強する手法などについて、米国特許商標庁(USPTO)から特許を取得した。ただ、建設には10年の歳月と50億ドル(約6000億円)の費用がかかるとされる。単なる絵空事に終わるか、あるいは宇宙エレベーターという壮大な夢の実現に向けた第一歩となるのか。

 設計したのは、2001年に設立され、トロントに本社を置くソステクノロジー(Thoth Technology)。その「ソスXタワー」は直径が230mのチューブ状で、中心の空洞に物資などを搬送する電動エレベーターを組み込む。空気で膨らませ強度を向上させた構造ユニット材を組み合わせて建設され、揺れなどに対する安定装置と空気を圧縮するコンプレッサー用にフライホイールを利用する。

 なぜタワーの上にロケットの発射台なのかというと、打ち上げの時の燃料の削減が見込めるため。通常のロケットは多段式で、宇宙に向かうのにエンジンや燃料タンクなどの機材を空中で切り離しながら軽量化し、加速する。20kmの高さでの打ち上げなら、地上からの距離が稼げる分、ロケットの構造を簡素化した単段式での打ち上げも可能になるという。同社は、単段式の再利用ロケットを地球周回軌道に打ち上げ、タワーの最頂部に帰還させる構想も持ち、この方式であれば燃料費をこれまでより30%以上削減できるという。

 ロケットの発射台以外に、通信や風力発電、観光などの用途も見込んでいる。すでに2009年には高さ7mのモデルが試作され、現在は1.5kmの実証タワーの建設を計画中。ロイターによれば、宇宙開発に取り組むグーグルやアルファベット、スペースX、欧州宇宙機関(ESA)などへの特許ライセンスも視野に入れているという。

 ソステクノロジーはこのほか、NASA(米航空宇宙局)の「オシリス・レックス計画」にもかかわる。6年ごとに地球近傍を通過する小惑星ベンヌ(Bennu)に探査機を着陸させ、「はやぶさ」のようにサンプルを持ち帰るミッションで、2016年9月に探査機を打ち上げる予定。同社は真空で極端な温度差のある過酷な宇宙環境でも使える光リモートセンシング装置(ライダー、LIDAR)を、この調査ミッションに供給する。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
宇宙エレベーター(軌道エレベーター)については100年以上も前にその概念が提唱され、本来は高度3万6000kmの静止軌道以上まで到達できるエレベーターのことをいう。それに対し、20kmの高さは超々高層タワーの域を出ないのかもしれないが、「宇宙ロケットのためのエレベーター」ということで、言った者勝ちか。

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