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課題山積で船出したキオクシア(旧東芝メモリ)、“船長不在”で大丈夫?

成毛社長は療養中、カリスマ復帰待たれる
課題山積で船出したキオクシア(旧東芝メモリ)、“船長不在”で大丈夫?

「キオクシア」は波乱の船出となった(ブランドロゴの除幕式、30日)

1日付で東芝メモリホールディングスから社名変更するキオクシアホールディングスは、“船長不在”という異例の船出となった。東芝時代からNAND型フラッシュメモリー事業を引っ張ってきた成毛康雄社長が病気療養中のためだ。米中貿易摩擦の荒波を受けるなかで、2020年9月予定の新規株式公開(IPO)など問題は山積み。波乱の幕開けとなった。(取材・鈴木岳志)

 成毛社長の復帰は当初9月中を予定していたが、療養継続により10月以降へ延期された。市況変動の激しい事業体質だけにトップ不在の経営執行体制を危ぶむ声は少なくない。

 また、15年以降経営危機に陥った東芝からの独立劇などで奔走し、米ベインキャピタルなどの親会社や経済産業省、政治家らの信任は厚い。“扇の要”を退任で失う事態になれば、混乱は必至だ。

 ただ、長期療養中ながら社名変更のタイミングで後任人事が発表されなかったことから、関係者の間で立役者の成毛社長の復帰を辛抱強く待つ方向で意見が一致しているとみられる。図らずも19年内を目指していたIPOを20年9月へ先送りし、次の大きなヤマ場は約1年後になる。

 NAND型フラッシュメモリー価格は18年後半から下落し、19年前半も低迷が続いた。世界首位の韓国・サムスン電子の安売りなどが原因だった。ようやく価格上昇の兆しが見え始めた6月に地域の停電で四日市工場(三重県四日市市)の一部製造棟が約1カ月稼働を停止。19年4―6月期連結の当期損益は952億円の赤字と苦しんだ。7―9月期も四日市工場減産の影響を引きずる見通し。その結果、19年内のIPOは断念せざるを得なかったようだ。

 今後は米中貿易摩擦に加えて、ライバルのサムスンや韓国・SKハイニックスを直撃する日本による対韓国輸出管理厳格化も市場環境の波乱要因となる。先の読みにくい航海に向けて、カリスマ船長の復帰が待たれるところだ。
日刊工業新聞2019年10月1日(電機)

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