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IHIが30年ぶりにボイラ製造設備刷新へ、肝はパイプ曲げ!

新興国を中心として石炭火力に根強い需要
IHIが30年ぶりにボイラ製造設備刷新へ、肝はパイプ曲げ!

相生工場内の桜ヶ丘工場で製造する発電所向けコイルエレメント(手前の加工品)

 IHIは2020年上期に相生工場(兵庫県相生市)の火力発電所向けボイラ製造工場のパイプ曲げ設備を約30年ぶりに刷新する。投資額は数億円。脱炭素化の流れで火力発電への逆風は強まるが、新興国を中心として石炭火力に根強い需要がある。中核設備を刷新することで工程のボトルネックを解消し、納期に対する柔軟性を高める。パイプ曲げ加工能力は全体で現行比50%増となる見通しだ。

 刷新するのはコイルエレメントの連続曲げライン。コイルエレメントはタービンを回す高温高湿な蒸気が通過するボイラ内の構成部品。2ラインのうち、1ラインを最新鋭の設備に切り替える。曲げ工程は「コア技術が詰まっている」(永吉正和相生工場長)。自動化につながる仕組みを盛り込み、加工時間を短縮する。

 コイルエレメントの製造では複数のパイプを1本に溶接でつないだ後、パイプの複数箇所を曲げて再度溶接を行っている。曲げ加工は、角度やパイプサイズなど製品仕様に応じて金型を取り換える必要があるため手間がかかる。

 相生工場では生産能力の最大化を目指して情報通信技術(ICT)による進捗(しんちょく)の可視化を実現しており、コイルエレメントの曲げ加工工程がボトルネックになっていることが分かった。そのため、設備の刷新を決めた。

 IHIはボイラ製造について、相生工場をマザー工場とし、インドネシア子会社との分業体制を敷いている。

 8月にベトナム向け出力66万キロワット級の石炭火力発電所用ボイラ2基の受注するなど、21―22年頃までの仕事量を確保しているが、新設案件は減少傾向にある。メンテナンス分野の事業を拡大しているが、既存設備では急を要する案件への対応が難しく、受注機会を逃す可能性があった。

 ボトルネックを解消する設備更新に加え、デジタル機器を用いて熟練工の技術をデータ化し、若手社員の成長につなげる活動も進める。

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日刊工業新聞2019年9月25日

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