“地元力”でAmazonにも勝負できるニッチな料理本専門サイト

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO) 海外ECサイト事例に学ぶ「売上アップのノウハウ」

 あなたは今まで自分で作ったことのない料理を作る、となったとき、どうやってその方法を調べるだろうか?

 一番手っ取り早い方法は、料理名を検索していくつかレシピをピックアップし、その中から自分の持っている調理器具や材料にみあうもの、あるいはピンと来たものを絞ってその手順通りに作る、というようなやり方だろう。インターネットがあるおかげで、料理関係に関する知識はほとんど即座に手に入るようになった。

 しかしそんな時代になっても、本屋に行くと結構多くの料理本が揃っている。個々のレシピを知りたいだけならネットの方が便利だが、あるジャンルに特化していたり、これから料理をはじめる人がどういう知識や器具を揃えていけばいいのか、といった体系的・専門的な知識となると、やはり料理本のほうが情報も豊富で、頭にも入りやすいようだ。

 今回ご紹介する「Omnivore Books」http://omnivorebooks.com/は、そうした体系的な知識の得られる料理本、あるいは地元サンフランシスコで活躍するシェフの本などを実店舗とオンラインで書籍を販売しているショップ。コレクター向けに行っている要素もあり、価値の高い初版もの、著者やシェフのサイン入りのもの、日本語を含む外国語の料理本など、入手困難な取り揃えで、料理に関心の深い人々を満足させているという。

 twitterのフォロワーの数は2万3000以上。実店舗のイベント情報の他、新しく入荷した書籍の紹介やレストランの紹介、ファン同士の本のレビューや意見交換などが行われており、地元のコミュニティ的がある点も魅力のひとつだ。

 料理の希少本に目を付けてニッチな顧客を開拓

  Omnivore Booksの創設者はCelia Sack(以下、サック氏)、生まれも育ちもサンフランシスコのユダヤ人だ。

 サック氏は大学生の頃、ニューヨークのオークションハウス「クリスティーズ」のインターン生として働いていた。そこで希少価値のある書籍を担当し、料理に関する書籍に興味を持つようになる。料理関連の本に惹かれたのは、料理を通してその時代、その時代で違う文化や社会を教えてもらえるからだったという。

 最初に購入した本は1898年に出版されたアンティーク本。また、大学を卒業したての頃にはパスタの作り方など、自炊する人向けの本なども購入するようになり、20代になると自宅に5000冊以上の料理本のコレクションを持ついっぱしの料理本コレクターとなっていた。

 そんなサック氏の本業はペットショップの経営だったが、2008年にポートランドで開かれたアンティークブックフェアを訪れたとき、食べ物やワイン、農業や園芸などに関する希少本を販売する「Rabelais Books」の共同創業者として成功を収めていたリングレン氏と出会ったことで、アンティーク本を手掛けるきっかけが生まれる。

 “リングレン氏は私にこういったの、よほど大昔の本でなければ集めることは可能だよって。それで、私も本を仕入れて書店を開くことができるかもしれないって思ったのよ”
 - サック氏

 彼に触発されたサック氏はアンティークの料理本と最新の料理本の両方を扱う書店を開くことを決意し、2008年11月にOmnivore Booksをオープン。成功のカギはニッチな顧客の開拓にあると思っていたため、店舗は大通りから少しはずれたところに構えて費用を抑える一方で、もっとも重要なヴィンテージ本の仕入れに資金を集中したことだった。

 そして地元サンフランシスコの顧客からの人気を得るようになると、ショップを利用したくとも難しい遠方の顧客も利用できるようにとオンラインでも商品を取り扱うようになったようだ。


海外ECサイト事例に学ぶ「売上アップのノウハウ」

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山口 豪志

山口 豪志
08月31日
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ニッチは強い!
この例にあるように、ある特定の層に向けて絞って行くことで専門性を高め、その価値によってブランド化されていく好例。日本でもこういう形の地方創生や地域活性化の手法はあり得ると感じる。様々な可能性を感じさせる素晴らしい取り組みだと思う。

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